社長がボケてきた!
「社長が、昔よりキレやすくなった。
社長が自分の発言を覚えていない。指摘すると、言ってないと逆切れされる。
同じ会話を無限ループする。
もともと理不尽だったが、さらに不条理・理不尽な指示が増えた
時間にうるさくなった、自分は暇なのに、ペースを乱されると怒る」
こんなことが当てはまるようだと社長の認知症の疑いがあります。
経営者が認知症になると、会社はいったいどうなってしまうのか?
こんな疑問にお答えします。
結論から言うと、
社長が認知症になったら、
後継者は、すべての業務を中断してでも、会社の存亡の危機になる前に、早期に全力で対処することが重要です。
事業承継において社長の認知症の解決のステップとは
1、会社の社長・経営者が認知症になるとどんなリスクがあるかを知る
2、事業継承を前倒しで行う
3、やっておいて良かったこと、リスク回避
僕自身は、2代目として、父親からIT企業を引継ぎました。
引き継いだ当時は、財務的にかなり危険な状態でしたが、リストラなどを実行して、
会社を再建しました。
ただ、その事業継承のタイミングで、社長の言動がおかしく、内心では認知症を疑っていました。当時は、事業継承に集中すべきで、周囲には話しませんでしたが、のちに発覚します。
ですから、これから書くことは、参考になると思います。
経験者が語る社長の認知症に、後継者はどう対応すればよいのか?
僕の父の認知症は、珍しいタイプのピック病と呼ばれるものです。
日本国内に1万人以上いるといわれています。
理性的な行動を取ることができなくなり、社会の規範にそった社会生活が送れなくなります。
父の場合は、店員さんに暴言をはく、決まった時間・場所など時刻表的な行動をする、不潔でお風呂に入らなくなる、列に並ぶなど社会的ルールを無視する、といった症状がでました。
例えば、
列に並んでると、割り込みしてしまう。
「ちゃんとこルールを守りましょう」と注意を受けると、逆切れして大騒ぎしてしまう。
自分が時刻表なような行動をして、周囲にもそれを強制する。
朝6時45分には新聞新聞取りいくとなったら、その時間に新聞が入ってないと配達店にクレームの電話入れる。
デニーズで、朝ごはんはとなると、そのために、何時何分に家を出て、店につくと、決まったに座り、メニューはいつもオムライス、ドリンクはメロンソーダという風になります。
以上は、ピック病だった父の特徴ですが、問題行動を起こす老人でかなりこのピック病がいると思います。
そして、創業経営者は、多かれ少なかれもともと、言動が過激だったりするので、ピック病だった場合、かなり症状が進行するまで周囲が分かりにくいというデメリットあります。
1、会社の社長・経営者が認知症になるとどんなリスクがあるかを知る
では、会社の社長・経営者が認知症になるとどんなリスクがあるでしょうか。
- 銀行取引に支障が出る
- 高額な買い物を、不要な仕入れなどを勝手に行う
- 不動産売買などの取引ができなくなる
順に説明していきます。
1、銀行取引に支障が出る
まず、実話で僕が困ったのが、知らないうちに父が契約していた某メガバンクの複雑な金融商品です。毎月50万近い損失を出していました。金利をスワップする商品ということでしたが、自社の規模からするとまったく不要なスケールでした。
当時60後半の父がとても理解していたとは思えませんが、知らないうちに契約し損失が膨らんでいました。当然、僕が銀行に、解約を申し入れたのですが、これがなかなか聞き入れてもらえません。後から思えば、借入もない銀行だったので、金融庁に申し入れをすれば良かったです。
次に、僕は幸い経験しませんでしたが、銀行の融資についてです。
かならず、融資の契約については、必ず面談で、契約内容の説明と、代表者の連帯保証行為などに対する意思確認が行われます。その時に、認知症とみなされて意思確認ができないと判断されれば、当然、契約できません。
そうなると、既存の融資については影響ありませんが、新たな融資を受けることが難しくなります。多くの中小企業では、これは企業存続にかかわる問題になります。
2、高額な買い物を、不要な仕入れなどを勝手に行う
僕の父は、アメックスのゴールドカードを法人カードで使っていました。かなり枠が大きかったので、ときには一回の買い物で秋原場で100万近く使うことがありました。
本人は仕入れだと言い張りますが、現場では使わないものばかりで、これには困りました。
社長退任後は、法人カードを解約してもらいました。
あとは、カード会社にいって利用限度額を減額してもらう対応ができます。
また、社長退任後の肩書については、上記の銀行対応や、取引先から代表権を持たないことを明確にしたいと、僕は考えました。
そこで、本人は会長の肩書を望みましたが、僕からの提案は「顧問」「相談役」「監査役」「ファウンダー」でした。
3、不動産売買などの取引ができなくなる
これも大問題です。
ちょうど、私が事業継承するタイミングで、会社再建のためのリストラ計画を実行していました。その一環で不要資産の売却、本社ビルの売却を行いました。
本社ビルの時は、まだそれほど、進行していなかったんですが、本人所有の地方のアポアートを売却するときには、かなり進行していました。
物件売却の商談は、息子である僕で全然問題なかったのですが、最後の売買契約と所有権の名義変更については、司法書士の方が入ります。
この時の本人の意思確認があぶなかった。もう、えいやで、その場でなんというかは運ませでやりました。なんとか、面談の時はうまく対応してくれたので、無事、売却はできました。
金額が大きい場合は、成年後見人をつけるなど具体的な対策が、予め必要です。
2、事業継承を前倒しで行う
上記のリスクを理解したら、それを回避するためにも、事業継承を前倒しで行うことが重要です。
まずは、病院に行って、診断を受けることが重要ですが、本人が嫌がっていけないケースも多いかもしれません。実際、私の父は、まったく病院にはいきませんでした。
ある程度、認知症が進んでくると、社員からもクレームが来たり、不安の声が出てきます。
そうなったら、後継者は、すべての業務を中断してでも、会社の存亡の危機になる前に、早期解決に向けて全力で対処することが重要です。
僕は、全業務を中断して、約2週間は、父の認知症対応に専念した結果、早期に解決できました。
3、やっておいて良かったこと、リスク回避
僕は、3人兄弟の末っ子ですが、上二人が姉なので、長男の僕が事業継承することが決まっていました。
ところが、父は会社の株を兄弟3人に平等に分けていました。
本人は、資産を平等に分けたい狙いだっだのでしょうが、
実際のところ、会社は実質的に債務超過状態で、株式には時価評価で価値はありません。
もめる原因になるだけなので、早めに、株式の贈与をお願いして、実行していました。
あと、車の運転です。
父は創業から常に、自分で運転した車で通勤して、日中もどこにいくのも車で移動していました。
認知症が進んでから、母から車の運転が危険だという声もでましたし、僕がために同行するとひやっとするシーンもありました。
そこで、車の運転をやめるようにお願いしましたが、すぐには聞いてくれせん。
そこで、車が会社のリース契約、自宅の近くの駐車場も会社の契約でしたので、
会社の財務状況が厳しいことを説明して、会社負担から自己負担に切り替えてもらいました。
そうしたところ、幸い、数か月以内に金銭的な負担が嫌になったのか、車を手放してくれました。
もし、そのまま自動車に乗り続けて、事故でも起こしていたらと思うとゾッとします。
早め早めの対応が重要だと思います。
まとめ
事業承継において社長の認知症の解決は、3ステップで行う。
1、会社の社長・経営者が認知症になるとどんなリスクがあるかを知る
2、事業継承を前倒しで行う
3、やっておいて良かったこと、リスク回避
社長の認知症は、緩やかに進んでいくと、問題対処が先送りになりがちです。
とりわけ、経済状況が厳しいと、後継者にとっては、他に対処すべき問題が山積していますから。
ところが、社長の認知症トラブルと、会社の経済的な危機が同時発生すると、これはどうにもなりません。
ですから、「社長がボケてきた」と、社員や取引先から言われるような事態になる前に、事業継承を進めることがおすすめです。
もし、周囲からそこまで言われる事態となったら、
後継者は、すべての業務を中断してでも、会社の存亡の危機になる前に、早期に全力で対処することが重要です。
会社の規模がそこそこある場合は、
事業継承のオプションとして、M&Aコンサルタントなど第三者に介入してもらうのも一案ですね。