日経サイエンス7月号、日経サイエンス社発行、¥1400-です。

5月26日付けの日経新聞に記事が少し紹介されており、興味を持ったので買ってみました。

目次
◎迷惑メールを撃退する
◎多重活用の巧妙なしくみ
◎動物たちの行動経済学
◎超伝導の常識を破った二ホウ化マグネシウム
◎不確実な未来をどう扱うか
◎貝から生まれた鎮痛剤

★目次の通り盛りだくさんの内容です。ご紹介するのは、その中の『動物たちの行動経済学』です。

『動物たちの行動経済学』
協力する、恩返しする、不当な扱いに腹を立てる・・・・・
社会性を持つ動物は人間同様に取引に関心があるようだ

F.B.M ドゥ・ヴァール(エモリー大学)著

<b>◆動物行動経済学とは?</b>
◎従来の(古典派)経済学が市場の力関係を軸に経済活動における意思決定を理解しようとしてきたのに対し、
(人間の)行動経済学は人間の行動に意思決定の原理を求める。
カーネマンとスミスが2002年にノーベル経済学賞を受賞して以来、この学派は広く世に知られるようになった。

◎動物における行動経済学はまだ生まれてまもない分野で、人間に見られる互酬性や報酬分配、協力
といった取引への強い関心が実は人間だけのものではないことを明らかにし、それによって新学説の
裏づけを進めつつある。

◎人間以外の動物がこうした経済志向を持つに至った理由も、おそらく人間の場合と同じだろう。
集団生活を支える共同利益を損なうことなく、各個体がお互いを最大限に利用しようというわけである。

<b>◆行動経済学が示す人と動物の進化</b>
◎人間の経済活動でお返しや需給関係が大きな影響を及ぼすように、動物たちの取引活動もこれらに左右される。

◎動物、人間を問わず、交渉の根底には情動がかかわっており、不当な扱いに対する激しい怒りといった感情が
取引に影響する

◎人間と動物に共通のこうした心理によって、利他行動のような興味深い振る舞いを説明することもできる。
利他行動は霊長類に見られる協力という行為の背景をなしているのだ。

<b>◆互酬性を生み出すメカニズム</b>
◎人間も動物もさまざまな方法で利益を交換する。これを専門用語では互酬性という。
互酬性が働くメカニズムはさまざまだがいずれの場合も、「情けは人のためならず、めぐりめぐって己がため」
が共通要素だ。

◎対等「俺たち相棒」:二者が互いに親密な場合、総合的な関係が満足できるものである限り、日々の
ギブ&テイクをいちいち把握しなくても、相手に対して同じような行動をとる。
このタイプの互酬性は自然界では最も多く、人間やチンパンジーの親しい者どうしで
典型的に見られる。

例:友達どうしのチンパンジーは仲間づきあいをし、グルーミングをしあい、けんかの助っ人も引き受ける

◎態度「親切にしてくれたらお返しするよ」

◎計算「最近、何かしてくれたっけ?」

<b>◆協力しない者に利益なし</b>
◎人間、動物を問わず、結局のところ経済活動では不当に利得を狙う寄食者問題と共同作業後の報酬分配方法を
解決する必要がある、これは、最も大きな助力をした者に最大級の分け前を提供し、期待が裏切られたときには
強い情動反応を示すという形で行われている。人間と動物に共通したこの心理を認識し、私たちがモラルという
黄金律を受け入れているのは、ホッブスが述べたような偶然ではなく、霊長類特有の協力的な性質のおかげだと
考えるのが、真の進化論的経済学なのである。

本来は本文にあるチンパンジーやオマキザルの生態の観察事例や実験例を紹介しないと、内容については分からないと
思うのですが、中途半端に要約することもできず、興味ある方は、本屋でどうぞ!

行動経済学と、行動心理学はかなり近い関係にあり、
また、(霊長類)動物の行動経済学は、人間の本質的な部分を突いていると感じました。
そうした意味では、マネジメントにおけるオープン・ブックなど、行動経済学や動物の行動経済学に適った
ものではないかと思います。
大企業レベルでは、市場や競合他社、株主の関係など、企業自らがコントロールできない要因が多すぎますが、
中小企業では、顧客との関係、会社と社員の関係を一番重要な要素なので、
構成員のモチベーションを引き出す、シンプルなマネジメントが可能ではないかと思います。

本日は、この辺で。

投稿者 himico-blog