本日の1冊です。
伊藤重光「ERPプロジェクトこうすれば成功する」日本経済新聞社、¥1800-です。
目次
1、概要編 成功のポイントは何か
2、詳細編 各分野の課題と対応策を探る

◆ERPとは何か
 ◎基本的な考え方は企業グループ全体(エンタープライズ)の業務プロセスを簡素化、
  統合化することにより、管理レベルの向上と経営資源(リソース)の有効活用
  を図り、結果として経営に貢献することを目指したものである。

◆ERPパッケージの条件
 ①基幹業務をカバーしていること(会計、購買、販売、物流、人事)
 ②統合システム・統合業務データベースとなっていること
 ③豊富な標準業務プロセスを準備していること

◆ERP導入の狙い
 ①業務改革の推進 
  ERPパッケージに実装されている、世界の先進企業における業務プロセス(ベストプラクティス
  と呼ばれている)をひな型として、自社の業務プロセスを見直す狙いでERP導入を目指すケースである。
 ②スピード経営
  一元化されたデータベースと統合化された業務プロセスが、ERPパッケージの謳い文句でもある。
  一度の入力により関連情報の更新をリアルタイムで実施するため、現場の入力が会計処理まで反映され、
  売上、利益、在庫、生産などの状況が刻々と更新される
  最新の経営状況の把握により、迅速な経営の意思決定が可能となるわけである
 ③業務の簡素化・効率化
  ERPでは、一度入力された情報により関連の業務プロセスに情報が反映されるため、情報の重複入力がなくなる。
 ④グローバル対応
  多言語対応および多国通貨対応であり、世界中にシステムを展開することが可能。
 ⑤情報の共有化
 ⑥開発・保守コスト削減と期間短縮
  ERPパッケージではよく利用される業務プロセスは標準装備となっており、いちいちプログラムを開発せずに
  パラメーター設定などの作業を通じてシステムが完成する
 ⑦SCM、CRM、e-MPのための基盤作り
  SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)やCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
  e-MP(e-マーケットプレイス、電子市場)までをカバーするパッケージである。

◆日本での導入はなぜ難しいか
 ◎ユーザー企業における理由
  ①日本的商習慣への対応
  ②業務プロセス変更の意思決定の遅さ
  ③ユーザーの使い勝手を重視してきた経緯
  ④全体最適の意識の弱さ
  ⑤変化への対応
  ⑥生産管理のレベルの高さ
  ⑦SI的な意識によるBPRの請負要請
 ◎ERPベンダー企業における理由
  ①日本語化、日本化対応の遅れ
  ②標準要望の採用基準の曖昧さと開発側の理解不足
  ③日本での支援体制の弱さ
 ◎パートナー企業における理由
  ①開発パートナーとしての意識
  ②パッケージ精通者・経験者の不足
  ③全局面を支援できるパートナーの不足
  ④グローバル対応の弱さ

◆ERPプロジェクトの進め方
 ①業務側メンバーが考え、決断することが重要
 ②点から面への業務検討の拡大
 ③何を追加開発すべきなのか
 ④プロジェクト期間中の研修を十分に

◆ERPプロジェクトの局面
 ①企画・計画
 ②詳細業務設計
 ③システム構築
 ④テスト
 ⑤移行
 ⑥本番稼動

◆ERPはなぜ費用がかかるのか
 ①ハードウェアの費用
  ○ノンストップ稼動には複数のサーバーが必要
  ○一人一台の高性能パソコンが必要
  ○データの保管の仕組みが必要
 ②ソフトウェアの費用
  ○ERPパッケージ費用はユーザー数により異なる
  ○前提ソフトウェア及び専用ソフトウェア費用にも注意
  ○運用支援ソフトウェア
  ○情報伝達のためのソフトウェア
 ③人件費およびその他の費用
  ○ERPコンサルタント
  ○自社要員
  ○追加開発・周辺システム開発・データ移行費用
  ○研修費用

◆費用削減のポイント

◆失敗のパターン
 ◎業務部門の参加が弱く、後になって「使えない」の議論
 ◎安易に追加開発に走り、開発量が大規模に
 ◎データ移行を軽く見て、最終局面で大騒ぎに
 ◎研修が不十分で新業務に現場が対応できず混乱に

◆成功するための7ヶ条

◆成功する会社・失敗する会社

◆最近の動向

★後半は購買分野、生産分野、販売分野、人事分野、会計分野などの課題と対応策について述べています。
 またシステム技術についても説明があります。
 ERP検討の必要がある会社の経理パーソンには、是非お勧めの1冊です。

最近は、一時のERPブームが一段落し、むしろERPベンダーは上場企業・大企業から中堅・中小企業へと
ターゲットを変えてきたと思います。
私個人は、会計システム単体を開発するベンダー側なので、ERPについては、対抗意識もあり、
つい批判的な立場になってしまいます。
(以下、話半分で、ご参考までに)

 まず第一にコストが高すぎます。導入金額の面では、会社によっては、人事など一つのモジュールが数億単位となります。
さらに事前研修を義務付けられる為、業務を熟知しているベテラン社員が数ヶ月から半年単位で拘束されます。
ここで新人などを参加させると、システム仕様などでもっと大きな問題が生じかねません。
 第二にそもそもの導入前提である統合業務システムにならないケースが上げられます。導入しやすい人事から、あるいは
経理からと始めておいて、核となる販売や物流は自社開発のシステムのままというケースもあり、そこの連動を図るために
さらに特注開発費用がかかる例も良く聞きます。
 第三には、経理実務者にとっては最も重要かもしれませんが、システムの操作性及び使い勝手です。
もちろんベンダーやカスタマイズの程度によって様々でしょうが、未だかつて「良い」という評価を聞いたことがありません。
むしろなぜここまでも使い勝手が悪いのか、という声も聞きます。
個人的には、開発思想の違いだと思います。あくまでもトップダウンで、あるいはトップセールス(セールス対象が経営者)向けに作るか、という立場と
経理実務者の声を聞き、現場志向で作るか、という立場の違いです。

もちろん導入が成功して、企業がより発展するケースもあると思います。
あくまでも私見ですが、導入の成功の為に、「外部の第3者のコンサルタント」を入れるというのはいかがでしょうか?
最初に話をもってくる会計コンサルタント等は、利害関係者となる可能性も捨て切れません。
そこで、自社よりの視点から、システム及び導入計画全体を評価するコンサルタントと別に契約するのです。
これはリスク回避になりますし、費用対効果的にも十分元が取れる可能性もあると思います。

本日は、この辺で。

投稿者 himico-blog