本日の1冊です。
津森信也著「財務部」日本能率協会マネジメントセンター、¥1500-です。
目次
第一章 財務部の基本機能と役割
第二章 財務部の戦略立案機能
第三章 財務部に必要な基礎知識と実務
第四章 財務部の基本業務
第五章 財務部の戦略的業務
第六章 財務部門の新潮流
◆財務部の機能
1)企業内の財務業務担当部署として企業の財務戦略の立案と実行
2)企業内の金銭資産の管理
3)資金の調達と運用
◆財務部の位置づけ
◎財務部は、管理部門に属する管理組織である。社内各部門に財務上のサービスと管理を提供する。
主たる業務は会社の金銭の管理である。あるべき金銭があるべき場所に、あるべき金額で、あるように
管理することである。資金は入念に管理しておかなければ、不正に使われ遺失する危険性が
非常に高い企業財産でもある。
◆営業機能としての財務部
◎外部調達(間接金融・直接金融)
・市場環境調査
・交渉
・人間関係構築
◆財務部機能の二面性
◎財務部の管理機能と営業機能
◆経理部と財務部の関係
◎企業によっては、財務部と経理部(または、主計部)が一つの部となっていることもある。経理部の中に財務課が
あったり、財務部の中に経理課があったりする。しかし、両者の機能はまったく異なっているということを
よく認識しなければならない。経営層が、その点を理解しないで数字を扱う部はどれでも同じと考えた結果である
とすると、経営上の問題がある。
◎経理部の本来的役目は企業会計原則に則り、会社の決算書を作成することである。企業会計原則に則っているかぎり
決算書は「作る」ことができる。”Profit is opinion, cash is fact”(決算上の利益は作れるものであるから
企業の意見を言っているに過ぎない。一方、キャッシュはいかなる操作をしても同じ数字しか出てこない。
すなわち、事実である。)という言葉がある。経理部と財務部の違いを見事に表す言葉である。
◆経営企画部と財務部の関係
◎企業の戦略は経営企画部で策定されているかとなると、ほとんどの企業ではそうではない。多くの企業において、
経営幹部は中期、長期経営計画を集計するに過ぎない部となっている。理由は簡単である、経営幹部は企業が
抱えている経営上の問題点を現実に知りえる立場にないからである。経営企画部には外部の客先はいない。
したがって、企業外部で何が起きているかを知りえない。
◆財務部員に必要な心構え
①企業理念の理解
②健全な常識
③チームプレーと牽制機能
◆財務部員の自己啓発
①全社資金の流れの理解
②会計経理担当知識の習得
③たゆまぬ財務知識の学習
◆CFOの役割
CFOとはChief Financial Officer(最高財務責任者)のことである。米国企業において経営に占める財務の役割が
高まり、それが経営方針を動かし、徹底した経営改善が行われ、業績が回復し、さらに財務の役割が高まるという
流れにある。このような流れの中で誕生したのがCFOという役職である。企業の財務関連事項一切を管掌する。
別途、業務執行に関し最高責任者を置くときには、「COO(Chief 0perating Officer)、最高執行責任者」と呼ぶ。
CFOは、CEOの次に位置するか、あるいはCOOに並列する。
◆株主資本コストの正しい認識
有利子負債にコストがあるように、株主資本にもコストがある。しかも、株主は企業の所有者であるから、
企業に対する財産の請求権は有利子負債提供者等の一般債務者に劣後する。したがって、株主資本コストは
有利子負債コストよりも、リスクが高い分だけ高くなる。
◆小切手
◎小切手とは、「振出人が銀行を支払人として、受取人、その指図人または持参人に一定の金額を払うべきことを
支払人に委託する有価証券」。
◎小切手の振出には、まず銀行に当座預金勘定を開設する必要がある。その上で銀行から交付される小切手用紙を
使用して振り出すことになる。
◎線引小切手
─小切手の左上肩に斜めに二本の線を引くことにより線引小切手となり、受取人の預金勘定に入金する形でのみ
換金が可能になる。得意先等から小切手で代金回収したときには、自ら線を引いて線引小切手にしておくことが
望ましい。
◆手形(約束手形)
◆手形(為替手形)
◆金利の計算法
①金利の前払いと後払い
②両端(りょうば)入れと片端(かたは)入れ
◆借入金
①商業手形割引
②手形借入
③証書借入
④当座貸越
◆スワップ
◆オプション
◆配当割引モデル
◆EVAの基礎知識と実務
◆貿易とプロジェクト金融の基礎知識と実務
◎信用状(Letter of Credit)
◎取立手形や送金等による決済
◆社内資本金制度
◎社内資本金制度を運営するためには、各事業部門に割当すべき株主資本額を全社的に納得いく方法で決め、
その上で株主資本コストを賦課する必要がある。
◎タダの資金であれば事業部門の数で割り算することもありえるが、この割当は大いに議論を呼ぶことになる。
同じ資産額であれば、明らかに少ない株主資本と多くの有利子負債という資本構成のほうが目標利益が
すくなくなるからである。
私自身が大企業の組織体系に不勉強なため、組織論に多くを割いてしまい、肝心の役立つ実務情報をあまり載せられませんでした。
資金調達と管理会計については、非常に広範な分野をカバーしていますので、ぜひご興味ある方は書店で探してみてください。
本日は、この辺で。
編集後記
最近、日経新聞の私の履歴書に注目しています。
加藤さん(本来、先生と敬称をお付けすべきでしょうが、このブログでは”さん”で統一します)のお話です。
もうちょっと前になりますが、尼崎のJR西日本の事故と国鉄民営化について、コメントされていました。
間違った(行過ぎた)民営化が、事故の遠因にあるという意見があるが、そんなことはない。
近隣の私鉄各社は、安全運行と企業経営を立派に両立しているではないかと。
私も、民営化は間違いという意見を聞くにつけ、なんとなくモヤモヤしていましたが、それを読み心が晴れました。
国営だから安全だという発想は、どこか前提が間違っていると思います。
親方日の丸という意識がまったくなく、頑張っている全国の中小企業によって、日本の経済は支えられているはずなのですから。
むしろ、親方日の丸体質の企業・組織の問題が相変わらず、新聞の記事でたくさん紹介されています。