『先駆の才 トーマス・ワトソン・ジュニア―IBMを再設計した男』トーマス・ワトソン・ジュニア(著)
出版社: ダイヤモンド社 (2006/12/1) ISBN-10: 4478340250

目次

─省略─

『 セールスマンとしての父は、背中をぽんと叩いて如才なく語りかけるタイプではなかった。父は、人々が
自然に打ち解けてくるような落ち着いた物腰を身につけていた。父の端正な顔立ち、いくぶん控え目な
しゃべり方、相手の話にも熱心に耳を傾ける態度──そういったものに引かれて話しているうちに、人はつい
品物を買わされてしまう、という風だったのである。』

『 父には、ほかの若者だったら田舎に逃げ帰るしかなかったような窮地をもはね返す能力があった。後日、
その楽天的な精神は、IBMの全社員が学ぶスローガンとなって現れた──「みずから道を切り拓け」「限りなき
前進」「ベストを尽くせ」等々──。父は、破産した肉屋の整理といった、ふつうならまず開運のチャンスの
ありそうのないところにチャンスを見出す術を知っていた。まだ肉屋の経営が順調だった頃、父はキャッシュ
レジスターをローンで購入していた。そして、残りの支払いの清算について、店の新しいオーナーと相談をしに
ダウンダウンに出かけた際、機をとらえてナショナル・キャッシュ・レジスター社(NCR)に自分を売り込んだ
のである。それこそが、後年の父の出世の糸口となったのだった。NCR、通称「ザ・キャッシュ」は、アメリカで
最も高名な会社の一つだった。オーナーは、ジョン・ヘンリー・パターソン。デイトン出身の、この小柄で
精力的な独裁者は、キャッシュ・レジスターをあらゆる近代的な店舗の必需品にしようと奮闘中だった。自身、
キャッシュ・レジスターの利用者だった、父は、自分ならほかの店主たちにそのメリットを説得することができる
と考えた。その判断は的中していた──父はまもなく「ザ・キャッシュ」のトップ・セールスマンの一人に
のしあがったのだ。
アメリカのビジネス史上、「近代的セールス活動の父」と謳われるパターソンは、ビジネスマンシップに
おける私の祖父とも言っていい存在である。父は彼のもとで18年間働き、後にIBMを築きあげた理念の多くを
彼から学んだのだから。』

『 フリントに入社を懇請された日、自分の報酬について話し合った時のことを、父は好んで語ってくれたものだ。
その時、父はこう言ったらしい。「わたしとしては、家族を支えられるような、紳士たるにふさわしい棒給を
いただきたい。それに加えて、株主の配当を差し引いた後に残る利益の一定比率分をいただきたい」
フリントはずばり核心に触れて答えた。「わかった。つまりきみは、自分で収穫したトウモロコシの分け前を
ほしいわけだな」
フリントがその取り決めを取締役会に報告すると、居並ぶ面々は唖然とした顔をしたという。株主配当を
差し引いた後に利益が残るなどとは、信じられなかったからだろう。だが、私が大学生になる頃には、その時の
取り決めによって、父はアメリカ一の高給取りにのしあがることになるのだ。
後年、父はよく鉛筆を取って自分の財産をさらさらと紙の上で計算し、純資産の総額を出していた。その紙を
持ち歩くこともあった。』

★この本では、実質のIBMの創業者である父と、二代目のワトソン・ジュニアの確執にページが割かれています。
実際の、中小企業の世代交代では、本当に、良くある話だと思います。

ここで、参考になるのは、
子ジュニアから、父にあてた手紙です。
例えば399、335、270にあります。本人は、399ページのレターを後年振り返り、失敗だったと反省して
います。

ただ、現実の闘いあったいる二人が、社員の前で、ほとんどつかみ合いの喧嘩を演じるよりは、
手紙を書くというのは、非常に、スマートな方法です。
ましてや、ののしりあいと違い、手紙は推敲を重ね、投かんの直前でも、読み返しができます。

世代交代・社長交代・権力抗争で悩む、二代目には、最適の1冊です。
ただし、長いです。

 

【2020年1月23日追記】

この本の中でも、ナショナル・キャッシュ・レジスター社(NCR)について、取り上げたのは理由があります。

それは、私の父が、独立する前に、この日本NCRに長く長く勤めていて、彼もまたセールスパーソンだったからです。

日本のコンピューターの黎明期に、IBMと死闘を繰り広げながら、シェアを競ったと聞いています。

 

そして、私もセールスパーソンとして、父の会社に入りました。

後から思えば、お互い会社をよくしたい一心だったのですが、

例えるなら、山を登るにも、北と南のルートをいくほど、

一時期、父と私は真っ向から意見が対立しました。

ある時など、営業会議で社員の前で、私は父に掴みかからんばかりの勢いでした。

 

そんなある日、

この本の学びから、自分の想いを、手紙に託しました。

その内容は、これまでの父の社業への貢献の労いの言葉と、

そして、今後は自分に事業を継承してほしいというストレートな情熱でした。

 

その結果、

いよいよ、私は、二代目として、会社の事業を任されれることとなります。

そして、

なんと、本書のトーマス・ワトソン・ジュニアと同様、

父がNCRで優秀な営業実績・ノウハウを獲得したことを感謝するようになりました。

このNCRセールスの体系こそが、日本のコンピュータセールスの礎を作ったといえます。

今でも、多くのお客様のご愛顧に、本当に感謝しています。

 

本日は、この辺で。

編集後記

わたしの事務所は、

半年前に、新しいビルに引っ越して以来、

毎朝、掃除をするようになり、

大掃除が必要ないほど、奇麗な環境になりました。

あとは、

自分のデスクと、自宅の掃除ですね(笑)。

 

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投稿者 himico-blog