三矢裕著「アメーバ経営 ミニ・プロフィットセンターのメカニズムと導入」

東洋経済新報社です。4492531629

目次
序章 京セラの発展とアメーバ経営
第1章 アメーバ経営の先行研究
第2章 関連領域の先行研究
第3章 調査方法の概要
第4章 京セラでの調査:アメーバ経営のメカニズムの理解
第5章 アメーバ経営導入企業でのパイロット調査:システックとディスコ
第6章 アメーバ経営導入企業での体系的調査:広島アルミニウム工業
終章 MPC理論の構築に向けて

◆京セラミタの件─日経ビジネス2002年1月28日号
「複写機メーカーの三田工業は1998年に約2000億円の負債を抱えて会社更生法を申請した。その後、
自主再建を断念し、京セラグループに加わった。京セラミタとして再出発した同社は、瞬く間に
事業の採算性を改善し、2001年3月期には前期比およそ二倍の70億円の経常利益を稼ぎ出した。
当初2009年までかかると予定されていた更正計画は変更され、2002年のうちに再生再建の一括弁済
を行うことができた。そして、このような復活を遂げることができた主たる要因が、アメーバ経営
の全面的な導入であった。京セラミタの場合は、これまで行ってきた他の経営方法からアメーバ経営
に乗り換えなければならなかった。ほとんどの従業員は三田工業の出身である。京セラとの文化の
違いに拒否反応を示した従業員も多かった。だが、おっとりしているといわれてきた三田工業の社風
が刷新され、コストダウンや納期に厳しい目標が課されるようになった。営業、生産現場、設計部門
の間の協力関係が生まれ、画期的な新製品がうみだされるようになった。トップから経営方針や会社
の業績が現場に知らされるようになったので、経営への参画意識が高まってきた。」

◆アメーバ経営の組織

◎アメーバは、最小で3人、最大で50人、平均すれば15人程度である。1992年時点では、800の
アメーバがつくられていた。アメーバは、あくまでも社内の組織であり、組織化にあたっては、可視性
(Visibility)、コミュニケーション、アカウンタビリティが考慮されている。
各アメーバはプロフィットセンターとして扱われる。そのほとんどは製造から販売のユニットである。
製造アメーバであれば製品あるいは生産プロセスの単位である。一方、品質管理や生産管理など
自分たちのサービスに価格をつけにくい部門はコストセンターとして扱われるものもある。これらの
部門のコストはアメーバ側で受ける便益に応じて配賦される。本社の管理部門は必要に応じて
アメーバの経営に関するアドバイスを行ったり、資金提供したりする。

◎アメーバは柔軟な組織であり、環境変化に適応できるようたえず分割や統合を繰り返す。アメーバを
新たにつくることが便益をもたらすと思われる場合には、いつでも新アメーバが生み出される。
新製品の開発で新しいアメーバがつくられたり、既存のアメーバの規模が大きくなりすぎたときには
分割が行われる。独立させておくメリットがなくなったときには、アメーバは他のアメーバに
吸収される。

◆アメーバ経営の管理会計

◎業績評価の指標は、製造アメーバであれば、ネット生産高、付加価値、ネット生産高当り付加価値比率、
労働時間当り付加価値(以下「時間当たり採算」)などである。業績評価の中心尺度の一つ目は、
年間計画や月次計画がどの程度決められたとおりに実施されているかである。販売アメーバであれば
受注量、出荷額、時間当たり採算が該当する。製造アメーバであれば総生産高、時間当たり生産、
時間当たりの採算が用いられる。ただし、販売アメーバと製造アメーバの時間当たり採算が用いられる。
ただし、販売アメーバと製造アメーバの時間当たり採算が比較されることはない。

◆稲盛氏の著書他

◎『心を高める、経営を伸ばす』(1989)『成功への情熱』(1996)『敬天愛人─私の経営を支えてたもの』
(1997)『日本への直言─夢と志ある社会を求めて』(1998)『人生と経営─人間として正しいことを
追求する』(1998)『稲盛和夫の実学─経営と会計』(1998)『実践経営門答』(1998)の7冊です。

◆ミニ・プロフィットセンター

◎アメーバ経営における利益のとらえ方
「利益は、売上と費用の差額である。一般的な利益計算では、製造段階は、コストだけが発生する。
工程がすすむにつれて、コストがどんどん累計されていく。一方、売上は、営業活動の成果である。
ここから、通常は、売上を計上した瞬間にはじめて利益が生まれる、と考えられる。
いいかえれば、これは『利益は営業側で生まれる』という発想である。」

「稲盛氏の言葉には、利益についての画期的な考え方が含まれている。「お客さんが値段を決める」
という考え方をさらに発展させ、『利益を生み出すには製造が創意工夫すること以外にない。
すなわり、メーカーの利益は、製造側で生まれる』と考えている」

◎値決め
「職能別組織の会社では、工程間をモノが流れていく場合、その仕切値には製造原価が用いられる。
また、事業部制をひいている会社でも、事業部間ではマーケットプライスによる売買が
行われることがあるが、工程間については製造原価での受渡しが行われている。
どちらにしても、前工程までのコストに自工程で発生するコストだけを積み上げていく、
いいかえれば、各工程には、コストに対する責任だけを負わせているということである。
一方、京セラでは、たとえ工程の末端のアメーバであっても、各アメーバの間は、
モノの受渡しがコストベースではなく、お互いに話し合って決めた値段で行われる。
アメーバはミニ・プロフィットセンターとして独立しており、この売買のなかから利益を稼がなければ
ならない。
ここで問題になるのが、交渉における値段の決め方である。この点に関しては、各アメーバ
のリーダーが自分の意思で決める。という原則だけが用意されている。常々、稲盛氏は、
『値決めこそ経営である』といっている。」

◆時間当たり採算

◎時間当たり採算の誕生
「生産高から材料費など発生する費用を全部引き、それを時間で割った時間当たり採算を用いるようにした」

◎製造部門の時間当たり採算
総出荷=社外出荷+社内売
総生産=総出荷-社内買
差引売上=総生産-経費
時間当たり採算=差引売上÷総時間

◆一対一対応の原則

◎アメーバ経営では、つねに、モノと伝票を同時に動かさなければならない。この二つが、あるアメーバから
別のアメーバに渡されたときに売買が成立する。

◆ストレッチングな目標設定

◎京セラでは、目標は、達成できないかもしれないが、願望から発した高いものでなければならないと考えられている。
予定組みにおいて最も議論となるのは、前月の実績に対して、今月はどういう改善が盛り込まれているのかという点
である。つまり、絶対値としての高い目標よりも、リーダーがどの程度上乗せしようと努力したのかのほうが
重視される。もし、環境が非常に悪くなることがわかっている場合には、どれだけそれを食い止められたかが
みられるのである。

★ちょっと、斜め読みすぎるので、もう少し精読したいところです。
中級編ぐらいの本を探し、再度チャレンジしたいと思います。

アメーバ経営を極めたいという方には、お薦めの1冊です。
やはり論文形式なところがあるので、実務家の本とはちょっと毛色が違います。

本日は、この辺で。

投稿者 himico-blog