『ザ・ジャストインタイム 現地現物が最高の利益を生む』フレディ・バレ、マイケル・バレ(著)
出版社: ダイヤモンド社 (2007/11/16) ISBN-10: 4478000468
目次
利益は王様、しかしキャッシュが支配する
流れのなかの黄ゴ ールド
タクトタイム
作業の標準化
すべては人
プルのための平準化
かんばんによる指示
現場アティテュード
平準化ウェイ
永遠の改善
エピローグ
解説
『 父は早くから日本の自動車産業の脅威に気がついていたことから、一風変わったキャリアを
築いた。ほとんどの同僚がこの新しい生産技術を無視するか、軽視するなか、父はそのトリコと
なった。私がティーンエイジャーの頃、父が話すことと言えばすべて、かんばんとか改善とかいった
聞き慣れない言葉だった気がする。父は大まかにだが日本語の勉強まで始め、何度も日本へ足を
運んだ。とりわけトヨタ自動車をよく訪ねていた。当然ながら、同僚の間では父の評判はよくなかった。
特に、欧米の管理者の欠点についてしつこく講釈を繰り返すようになってからは。イギリス人は
父のアメリカ的無神経を不快に思い、アメリカ人は単に彼を無視した。父のことを変わり者と見なす
人も、毛嫌いする人もいた。その結果、父はいくつもの会社を渡り歩き、経営を好転させては、
避けがたい権力闘争に敗れた。結局、会社を去らざるを得なず、また次の会社に入って、新たな闘争に
身を投じるのだった。』
『「コンサルタントか。そうかね。さて、私が君の工場の工程について何一つ知らないとしよう。
私は2つのことを心配するだろうな。
・製品の品質、そして
・私の目に映る能率の悪さ、だ。なぜならそれに関しては、いささかの知識があるからね。
君の工場の能率の悪さは、すべての製品の価格に反映される」』
『「トヨタの人たちから、初めて継続的改善システムを見せられたとき、彼らは「ムダとり」としか
言わなかった。私も君と同じようにわけがわからなかったよ。それで、どういう戦略を用いるの
かと聞いてみた。「簡単だ」と彼らは答えた。まずこう考える。
価格=コスト+利益
だがそこで、
利益=価格-コスト、だと気づく」
「同じことじゃないか!」私は思わず言ってしまった。
父は我慢強く説明した。
「そうかな。私はこの意味を理解するのに3年かかった。製品を作り、コストの合計を出し、
20%の利益をぽんと乗せて、あとはその値段でそのガラクタを売りつけられる顧客を探しに
かかるのが、われわれの従来のやり方だ。しかし、もし市場に受け入れられなければ、その
ときには市場価格で売らざるを得ない。そこからコストを引いて残ったのが利益ということ
になる。だから、売って利益を上げ続けたいなら、コストを下げる方法を見つけなければなら
ない。品質を落とさずにだ。これは、いまの作業からムダを減らすことを意味する。これが
いまの君の状況だ」』
『「それほどストレスがないと、退屈して無気力になる。もう一つ大切なのは、人には自分の
置かれた状況を合理的に説明してくれる理論が必要だということだ。きちんと説明がなされれ
ば、彼らは幸福でいられる。この理論が心理学の研究で何と呼ばれているかわかるかい?」
「教えてくれ」
「フロー(訳注・課題を達成したことで自覚、自信が高まった過去の経験)だよ。冗談抜きで」
「まさか!」
「本当さ! 親父が使った言葉にそっくりだけど」私は説明を続けた。「心理学を学び始めた頃、
何かのことことで言い争ったんだが、そのとき親父は興味深いことを力説していた。部品を
作る前に人を作るべしと、改善の指導者の一人から教えられたそうなんだ」
「部品を作る前に人を作る?」フィルがおうむ返しに言った。
「そう。その言葉は当時の親父に天啓のように響いた。今回のチームリーダーの役割とも結び
つく。親父は、経営陣の仕事は人を育成することであり、そうやって育った人が製品に価値を
付加するのだと主張した。僕らが言い争ったのは、その頃親父が人と「作る」と言うのを、
僕が言葉そのままに信じていたからなんだ。彼の流儀は知っての通り──これをやれ、あれは
やるな、理屈を言わずに黙ってやれ!」』
★これは2005年に米国で出版されたそうです。著者はフランス人の親子で、30年間ルノーで生産
マネージャーをやっていたそうです。
製造業のお客さんに行って驚かされるのは、
事務所で垣間見えるコスト意識、言葉の端々に出てくるコスト削減への執念です。
これは、日本だけでなく、世界全体の共通項だと、本書を読んで理解できました。
製造部門だけでなく、
これをホワイトカラーや、サービス業の分野に応用すると、
我々の仕事は、多くの改善点があると思います。
本日は、この辺で。
編集後記
今日、ご紹介の本の中で、「カラテキッズ」OR「ベストキッズ」の
エピソードがでてきます。
懐かしいです。映画館で見てましたので、
ここに出てくる主人公と、同世代なのかもしれません。