『フォーカス! 利益を出しつづける会社にする究極の方法』アル・ライズ(著)
出版社: 海と月社 (2007/8/3) ISBN-10: 490321205X
目次
第1章 多くの企業がフォーカスできない理由
第2章 グローバル経済の時代に勝ち抜くために
第3章 他の経営論とフォーカス論の違い
第4章 実行して成果を出した企業に続け!
第5章 トレンド最前線の小売業で起こっていること
第6章 二つのコーラの物語
第7章 重要なのは、「よい品質」より「よいイメージ」
第8章 言葉によるイメージ戦略
第9章 「万人ウケ」をねらうな
第10章 市場の変化に合わせてフォーカスする法
第11章 「分割」で業界トップに躍り出る
第12章 「複数ステップ」という手法
第13章 IBMに見る実践上の注意点
第14章 「イノベーションの溝」を越えて急成長を!
第15章 まとめ―フォーカスを成功させる一五の秘訣
◆中小企業の落とし穴
『「標準レベルにも達していないことを二つ手がけるより、すごくうまくいくことをひとつ手がける
べきだったんだ。僕たちは、成功するにはフォーカスする必要がある、と判断した。成功する
確立が一番大きそうなビジネスに、全精力を傾ける必要があったんだ」とスティーブ・マークスは
語っている。
メイン・ストリート・マフィンのような中小企業が生き残るのは大変だ。今年だけでも70万もの
新規ビジネスが誕生したが、五年後も続いているのは、せいぜい3万5000、つまり20分の1
ほどだろう。失敗の一番の原因は、一度にたくさんのことに手を出しすぎることにある。
何かひとつをうまくやり遂げれば評価される。そうなれば、長期的成功もほぼ保証される。しかし、
多くの中小企業は、長期的視野に立ってひとつのことをしつづけることができない。短期間で成功
できなければ資金繰りが苦しくなるからだ。』
◆ゼネラリストよりスペシャリストを目指せ
『 あるいはまた、「戦略はテントである」との言われてきた。テントを広げれば、参入したい分野を
すべて手にできるというわけだ。IBMは、巨大なコンピュータのテントを張ってしまった。今後も、
コンピュータ分野で売り出されるものでIBMのテントの外にもれるものなどないだろう。だが、
これが大惨事への道となるのだ。IBMは、コンピュータ業界という土俵に、新規企業や新製品、
新アイデアが上がってくるたびに、あおりを食うことになる。
IBMほどの巨大な財力を有する企業ですら、コンピュータ業界のように急成長するマーケットでは
守りに苦戦する。もっと選択肢を絞ってテントを張るほうが賢明なのだ。』
『 もし、一般外科医しかいない地域で、自分だけが脳外科医だったら、商売は恐ろしく繁盛するだろう。
法外な謝礼だって要求できる。だが企業は、これと正反対に考えるらしい。「自分は素晴らしい脳外科医
だと評価されている。だから、心臓や肝臓、肺、四肢の手術もうまくいくに違いない」。医学界では
起こりえない話が、経営の世界では起こるのだ。』
◆得意客にフォーカスして生き残る
◆小売業成功の法則①フォーカスせよ
『 五つのステップの中で、これが難しい。なぜなら、直感に反するからだ。経営者や起業家の多くは、
商品を増やす方法を求める。「急成長したいなら製品ラインを狭めるべきだって?そんなばかな・・」。
誰もが、商品やサービスは増やすべきものだと思っている。
だが、当然と思えることや合理的に思えることも、真実ではないことがある。ビジネスにおいては、
商品やサービスを増やせば利益が減る。逆に商品やサービスを減らせば利益は増えるのだ。だから、
もし急成長したいなら、まず商品やサービスの種類を絞らねればならない。会社設立を計画しているなら、
ライバルより取扱商品を絞り込むべきだ。』
◆小売業成功の法則②品揃えを豊富にせよ
『 トイザらスの成功の第二法則は、「品揃えを豊富にせよ」である。クリスマスシーズンになると、デパート
は約3000種類のおもちゃを揃えるが、トイザらスは、なんと毎週約1万8000種類のおもちゃを
揃えている。おもちゃの五つにひとつがトイザらスで買われる理由のひとつが、この圧倒的な品揃えにある。
品揃えの豊かさ、そしてそれに伴うコストの低さは、全レンタルビデオの五本に一本を占める
ブロックバスター・ビデオも同様だ。家族経営の小レンタルビデオ店が1000本揃えているとしたら、
ブロックバスター・ビデオの大規模店は5000本は揃えている。それに加えて、あらゆるフォーマットの
テレビゲームも、1000種類はある。』
『 もしあなたが小売業で成功したいなら、どこかの店に入り、最近棚に入った新商品を手にとってみるといい。
そして、この商品で品揃えを広げ、市場を独占するような全国チェーンをつくったらどうなるかをイメージ
してみることだ。
ダンキンドーナッツが登場して市場を独占するまで、ドーナッツと言えばパン屋や食料品店で買うものだった。
腕時計は、昔は宝石店で買ったものだが、今ではニューヨークのトゥルーノのような腕時計専門店で買う。
テレビも、昔はデパートで買ったが、今ではサーキット・シティのような家電チェーンで買うようになった。
専門店は、品揃えが豊富である。町のパン屋のドーナッツはせいぜい三、四種類だが、ダンキンドーナッツの
大型店舗では50種類以上ある。』
◆決め手は、「何に」フォーカスするかである
『 ライン拡大で財務危機に陥る企業がある一方で、フォーカスによって成功する企業がある。
戦場では、攻撃の前線拡大は自殺行為に等しい。成功をもたらす唯一の戦略は、前線を狭めることだ。
軍隊は、呪文のように「前線を絞り、深く潜入せよ」と繰り返す。集中は力を生む。分散は力を弱める。』
◆犠牲のない戦略はない
『 競争が存在する以上、市場を100%獲得することはできないという現実を受け入れれば、消費者の心に
刻み込む言葉も格段に見つけやすくなる。「市場全部を手にしなくては」とささやきつづける悪魔と決別
できるからだ。
一部を切り捨てて犠牲を払う──、これは企業戦略の真髄である。犠牲のない戦略はない。犠牲のない会社や
組織は、弱体化する。』
『 犠牲を払うことは、すべてをあきらめることではない。それは、自分のポジションを「定義」することなのだ。
自分のポジションを定義することは、自分と関わりのないものは何かを見極めることでもある。』
◆戦略調整法②完全に新技術に乗り換える
『 ベル・スポーツは、かつてアメリカ最大のバイクのヘルメットメーカーだった。だが今は、バイクヘルメットから
撤退し、自転車ヘルメットの専門メーカーになっている。同社のテリー・リーは言う。「乏しい資産を最大限に
有効利用するには、カミソリのように鋭くフォーカスを絞り込む必要があったのです」。この決断によって、
売上も利益も大幅に伸びた。市場シェアも50%を獲得した。1994年時点で、売上1億1600万ドル、純利益1050万ドル
である。』
★日本には、「ランチェスター戦略」がありますが、これは日本独自の企業戦略かもしれません。
フォーカスによって、成功した圧倒的ボリュームの事例がのっています。
ただ、10年前に書かれているので、その後、雲行きが怪しくなっている会社もあります。
全体としては、
古く感じさせません。企業戦略の基本中の基本ということなんだと思います。
けれども、
いざ、直面すると、非常に、難しい問題です。
本日は、この辺で。