『クリエイティブ・クラスの世紀』リチャード・フロリダ 井口 典夫(著)
出版社: ダイヤモンド社 (2007/4/6) ISBN-10: 447800076X
目次
第1章 クリエイティブ・クラスの大移動
第1部 クリエイティブ経済
第2章 クリエイティビティの重要性
第3章 開かれた社会の価値
第2部 才能をめぐるグローバル競争
第4章 鎖国するアメリカ
第5章 新しい競争相手
第6章 繁栄する都市、停滞する都市
第3部 クリエイティブ時代の課題
第7章 新たな格差社会
第8章 アメリカ政治の内部対立
第9賞 クリエイティブ社会の構築
◆行動こそがすべてである
『 ウェリントン生まれのジャクソンは、1990年代にアメリカの多くの都市で起きた、ある現象に気づいていた。
ダイナミックかつ広範に変化する経済においては、従来の常識を打ち壊すクリエイティブな産業こそが、
これからの繁栄を支えることになるだろうという点である。やがてジャクソンと仲間たちは資金を集め、
廃屋となっていたペンキ工場を購入し、そこをスタジオにふさわしいように改造したうえで、息をのむ傑作
「ロード・オブ・ザ・リング」三部作をつくり出した。その際、最高のカメラマン、衣装デザイナー、音響技師、
CGアーティスト、道具係、編集者やアニメーターをニュージーランドに呼び寄せる必要があったが、
その時の経験から、ジャクソンは「ロード・オブ・ザ・リング」のような作品さえあれば、世界中から
クリエイティブな才能の持ち主たちを、何人だって集めることができるということに気づいた。』
◆グローバルな才能獲得競争の始まり
『 クリエイティブな才能の獲得競争は世界中でヒートアップしている。約一億五千万人、つまり世界の人口の
約2・5%は母国以外に住んでいる。3000万人の外国出身の住民がいるアメリカは、その五人のうちの
一人を集めている。しかし移民人口の比率では、すでにカナダ(18パーセント)やオーストラリア(22パーセント)
がアメリカを上回っている。経済優位を維持するためには、製品、サービス面や資本面で競うよりも、
才能ある人々を惹きつけ、留まらせることが必要であるということに、多くの国々が気づき始めている。』
◆数字に見るクリエイティブ経済
『 過去10年間で最大の雇用増加があったのは、対人スキルやEQが必要な職業(たとえば看護師や弁護士)と、
デザイナー、建築士、写真家などの想像力とクリエイティビティを必要とする職業である。しかし、美容師の
雇用の増加に注目すればわかるように、新しい職業すべてが高学歴や芸術的才能を必要としているわけではない。
職業に対するこれまでの固定観念を守り続けることの利益は少なく、貿易とテクノロジーによって好むと
好まざるとにかかわらず経済環境は変わってしまう。それよりは各個人が才能を高める努力をすれば、よりよい
生活を続けるだろう。そこに私たちアメリカ人の未来がある。』
◆ゲイと経済成長、本音で話す
『 明確で活気のあるゲイのコミュニティがあることは、その地域が異なるタイプの人間を受け入れる場所である
ことを、明快に示す先行指標なのだ。約四十数年にわたって文化と経済成長の関係を研究してきた政治学者の
ロバート・イングルハートは、ゲイを社会的に受け入れないことは、世界中に残された不寛容と差別の最も
大きな砦であると述べている。したがって、ゲイを受け入れる場所はまた別のタイプの人々を受け入れ、
それゆえこれらの場所は、さまざまな人がもたらすイノベーションや起業家にも開放的なのだ。』
◆拝金主義を超えて
『 クリエイティブな人は、お金持ちになりたいがために一生懸命になるわけではなく、単純にそう理解するのは
はっきり言って正しくない。クリエイティブな人々をその気にさせるには、金銭よりも内発的な報酬のほうが
はるかに大事である。これは、この分野における大多数の研究によっても支持されている。』
◆人材不足の時代が来る
◆学生は才能鉱山のカナリア
◆ストレス社会の出現
『 職場のQCL(生活の質)を高めることが新たなトレンドとなりつつあるが、それは、単にそうすることが
正しいからなのではない。ストレスや不安感を和らげることで、企業は社内のクリエイティブな人的資本を
より活用でき、高い生産性を得られるからなのである。同じことは、都市や地域、国についても当てはまる。
個人や家族の生活の質が高まり、ストレスや不安感が小さくなったところでは、ライフスタイルが改善する
だけでなく、クリエイティブな人的資産をさらに有効に活用することができるのである。』
★誰もがクリエイティブな可能性を持っているという視点に立っていますので、
ある特定のエリート階層のため、ということではないでそうです。
9.11以降、米国の移民や留学・入国に対する規制が厳しくなって悪影響が出ている。
従来、米国の競争力は、移民などの海外からの流入に頼ってきたが、教育も大事である。
日本はどうでしょうか。今のところ、移民を受け入れようという議論はありません。
留学生の受け入れを増やそうとする、政策はありそうです。
仮に、うまくいった場合、増えた卒業生はどうなるのでしょう?
いろいろ課題がありそうです。
本日は、この辺で。