『さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生』伊東 乾(著)
出版社: 集英社 (2006/11) ASIN: 4087813681

目次

第1部 出来事
(苦行―中目黒発・東武動物公園行
筋書―アリジゴクの仕掛け
創発―行為は気づきに先立つ ほか)
第2部 証言
(拉致―騙された罪の重さ
調教―現象と詐術の接木
麻酔―窒息するニューロンたち)
第3部 伝言
(手紙 さよなら、サイレント・ネイビー)

『 オウム真理教の教義によるなら「密教的な宗教上の指導者に対する絶対的な帰依」である
「ヴァジラヤーナ」の教えによって「教祖と合一するために、いかなる指示であろうとも、
教祖の意思を実践する」「マラー・ムードラー」の修行の一環として、豊田被告は地下鉄に
サリンを撒いたことになっている。実際の犯行時、少ない意識の中で「こんなことはやりたく
ないな」と思い、しかしそのような考え自体が煩悩であると、豊田被告は思考を停止した。
だが現実には、そのマインドコントロールが解けてから後の豊田の煩悩のほうが、遥かに
大きなものになってしまった。・・・』

『 明らかにしたい問い

1 なぜ、人々はオウムや麻原彰晃に心酔したのか?
2 なぜ、若者はオウムでの「修行」に惹かれたのか?
3 なぜ、未来あるエリート科学者の卵が、あんな荒唐無稽な教団に走ってしまったのか?
4 マインドコントロールされて犯行に及んだとき実行者はどういう意識だったのか?
5 人々をオウムに駆り立てた本質的エネルギー源は何か?
6 宗教と科学の間の明確な矛盾を彼らはどう考えていたのか?
7 再発防止のために最初にしなければならないことは何か?

『 マインドコントロールは、操作される相手が感情的に混乱したり、恐怖心などに捉われて
いるときに容易に達成される。喜怒哀楽に大きく針が振れているとき、人に理屈を言っても
普通は通じるわけがない。「神風特攻隊は戦闘員が軍事目標に対して行なったもので、
民間人を道連れに民間人を攻撃した同時多発テロとは違う」といった理屈は「あとづけ」
としてのみ可能なものだ。・・・

・・・
「ナチスドイツのナンバー2だったヘルマン・ゲーリングって男が、戦後、連合軍に捕まって
から言っているのを読んだんだ。
【人間集団を攻撃的にするのはいとも簡単である。
自分たちが攻撃されている、と思わせれば良いのだ。
そうすれば、どんな集団でも、ただちに攻撃的になる】
こんなことが書いてあったよ」』

『戦争は、まさに創発するものです。革命も創発する。自然科学者も人文科学者も、建設的で
より良い例で創発の概念を語る傾向がありますが、私たちが歴史の不可逆性を考える上で、
一番大切なことは、建設と破壊を共に正確に扱うこと、個人と集団の生や死を、正確に、
慎重に取り扱うことだと思います。逆戻りができないプロセスこそが、あらゆる人間の
かけがえのない価値を生み出しているのですから』

『(オーディオやビジュアルのマスメディアが登場し、人類にファシズムが創発したこと)
(オーディオやビジュアルのマスメディアは、人が冷静に気づくより感情を先走らせること)
(感情が先走った人間は、例えば恐怖に駆られた人間は、思考するより先に行動し、
あとで取り返しのつかないこと)』

★少し、読み残しがあります。
じっくり読んでしまいました。

あの事件から、もうかなりの年月が経ちます。
以前から、オウムの映像を直接流すのは危険だ、という話を聞いたことがありました。
また、この本のエピソードででてくる、イラクで拉致された方が惨殺される映像がネット上で
ナガレルことの問題を、記事としても読み、興味深く思っていました。

まだ、まだ、未消化で、
ちょっと食べすぎを超えた満腹感があります。
けれども、怖いモノ知りたさと、
やはり、ときには、真面目にこうした事件を降り返る大切さを感じています。

本日は、この辺で。

投稿者 himico-blog