『バックヤードの戦士たち』吉田育代

書評

出版社:ソフトバンクパブリッシングISBN4-7973-1991-7

目次

 第一章 資材部門よ、立ち上がろう!
 第二章 サプライヤーとの情報連携システム 直接材購買「SPIRITS」
 第三章 志の高いパッケージを導入 間接材購買「SMAPS」
 第四章 SPIRITSとSMAPSが進む明日
 第五章 電子調達プロジェクト成功への道

◆自力で闘った資材部門のチャレンジストーリー(第一章より)

 とかく資材部門は、事務処理部門と受け止められがちだ。しかし、本来は違う。
 注文書を書いて送って、納期を確認して、伝票に振り回されるためにいるのではない。
 購買方針を立て、購買動向を分析し、サプライヤーを評価したり、といった
 戦略業務が本業なのだ。それなのに、受け身の仕事を強いられ、またその歴史が長い
 ために、自らの業務の枠組みを狭く考え、イニシャチブを持って全社に対して
 強く働きかけるという発想が生まれにくい。
 ソニーからのメッセージは、”資材部門よ、立ち上がろう!”だ。
 何も開発の、販売の最前線だけがフィールドじゃない。バックオフィスにいたって
 企業の競争力強化のためにできることは山ほどある。

◆”本社プロジェクト”に現場は困惑(第二章より)

 ある程度予想はしていたことだが、どちらの資材部門にも抵抗があった。それは
 大きく二つの理由によるものだ。
 まずは、本社に対するものだった。カンパニーには自負がある。自分たちが
 自分たちの裁量で自由闊達に事業活動を展開してきたからここまで伸びてきたんだと
 考えている。基本的に本社何するものぞという気概があった。
 もう一つは、サプライチェーンマネジメントという概念に対するものだった。
 世界レベルで注目され始めていたかもしれないが、冒頭でも触れたようにまだまだ
 人口に膾炙した用語ではなかった。

◆抵抗勢力と膝をまじえて(第三章より)

 あるときは、あまりの相手の頑固さに開きなおったこともある。”わかりました。
 もうお宅の事業所には入れません。未来永劫、紙で購買処理やっててください。
 こちらでは一切面倒見ませんから” ここまでいうとさすがに相手の態度が変わる。
 ”ちょっと待て。考える”といわれたのを受けて、”えっ、考えるんですか?
 今はうちのスタッフも忙しいから、決定が遅れるとそれだけ後回しになると思って
 ください” それだけいって帰ってきたりもした。しかし、個別最適のソニーだって、
 みんながみんな本社嫌いで凝り固まった頑固な人間ではない。理があれば通る。
 佐々木氏が全社集中購買だからこそ持ちうる価格交渉力、購買プロセスを電子化
 することによる省力効果を諄々と話すと、最後にはうなづいてくれた。

◆知名度が上がり、ひっぱりだこのSMAPS(第四章より)

 チームにとってラッキーなことは、ソニーグループの間にSMAPSの名が知れ渡り、
 ”うちも導入したい”という声が事業所から寄せられるようになったことだ。
 間接材購買を電子化すれば、月次の経理処理が確実に速くなる。経理に限らず
 オペレーションの電子化はもはやソニー全体の流れであり、グループ会社のトップが
 ”SMAPS導入にメリットあり”と判断し始めているのだ。

◆生き残るサプライヤーが見えてきた(第五章より)

 SMAPS一年半のプロジェクトで、どういうサプライヤーが生き残るのかはかなり
 見えてきた。具体的にいうと、「企業の体制が地場密着型ではなく、全国に販売
 ネットワークを有している会社」「全国レベルでロジスティックスが確立されている
 会社」「投資額の多寡に関わらず、ビジネスのIT化に姿勢として熱心な会社」
 は、サバイバルしやすいのではないかと考えている。

★何事にも個人重視の企業風土があるソニーの中で、全体重視の発想で導入が進められた
 ”資材調達プロセスの電子化”という業務改善。その実現にいたるまでの様々な困難や
 奮闘が描かれています。
 会社の中で、”縁の下の力持ち”いわゆるバックオフィスの立場にいても、会社のために
 出来る事はたくさんある、と実感しました。

本日は、この辺で。