澤田秀雄(著)「HIS 机二つ、電話一本からの冒険 日経ビジネス人文庫」です。
日本経済新聞社 ; ISBN: 453219315X ; (2005/11)
目次
第1章 旅行ビジネスへの挑戦
第2章 ビジネスチャンスをつかむ
第3章 急成長を支えた発想と営業戦略
第4章 成長企業の組織のあり方とは
第5章 HISは次に何を目指すのか
第6章 次代のアントレプレナーたちへ
◆「こんなに短期間に、なぜここまで事業が大きくなったのか」
◎「それは、運があったから。旅とビジネスが大好きだったから。苦しいときでも、
プラス発送を忘れなかったから。そして、コツコツ忍耐強く努力することをいとわな
かったから・・・・」
◆毛皮輸入販売会社の挫折と旅行会社の旗揚げ
◎旅仲間のサロンのようだった創業期の事務所
◎最初のヒット企画は「インド自由旅行」
「・・・ただし、私がこのとき実行していたのは、単に安い航空券を販売するという
のではなくて、旅のインフォメーションに重点を置いていたといえるだろう。・・」
『・・といった具合に、旅の細かな部分までコンサルティングしたのである。
少しあとになると、会場を借りて二十人くらいのお客さんを集めては、「インド
説明会」というイベントを開催し、自分で撮ってきたスライドを上映しては、
旅のインフォメーションを一生懸命提供していった。・・・』
◆旅行ビジネスは成長するという確信
◆バブル全盛期、あえて”一時避難”を決断
◆オフシーズンの航空券に着目してエアライン攻略
『攻略のポイントは旅行シーズンの波にあった。ご存知のように正月や夏休みなどの
旅行シーズンのピークは、どの航空会社でも航空券は黙っていても売れてしまう。
空きの席なんて一つもないような状態なのである。
だが、ピークを外れたオフシーズンは、売りたくても航空券は売れない。
その余った航空券をどう売るかが、航空会社の営業的な課題でもあったのである。
「そうか、オフシーズンにはエアラインも一枚でも多く航空券を売ってほしがって
いるのか」それがわかると、エアライン攻略の道筋が見えてきた。』
◆力が足りないときは事業のエネルギーを集中させよ
「まず、事業の力を特定の分野に集中させて、市場における優位性を確立する。
市場におけるナンバーワンは、ナンバー2の上という単なる序列の上下以上に、
決定的な立場を築くことができる。なぜなら、市場のトップシェアを占めることに
より、仕入や販売に対する市場決定権を優位にもってくることができるからである。
ナンバーワンの地位を築いた時点で、企業は自分自身が有する力の二倍、三倍もの
パワーを発揮できるようになる。それは同時に、ナンバー2以下の企業を一気に
引き離す、決定的な要因ともなりうるのである。」
「・・正直、えらいことになったと、しみじみ反省した。自分の力が未熟で、
一つのことも満足にできていないときに、二つ目のことに手を出すのは間違いだ、
と改めて教えられた。であるからこそ、たとえ私は格安航空券の販売で経営が苦しく
なったとしても、絶対に他の商品開発を進めることはしなかった。・・・」
◆マニュアルや才能よりも”やる気”が重要
「・・創業当時、自分自身が一人で何から何までやって、第一線のカウンター営業担当者
として頑張っていたときのことは、「オペレーションマニュアル」としてまとめてきた。
少し社員が増えて自分が、班長レベルの仕事をするようになったときのことは、
「班長マニュアル」としてまとめている。主任の仕事をするようになったときのことは
「主任マニュアル」、支店長のときは「支店長マニュアル」といった具合に、
自分自身がカウンターの第一線から後ろに下がるたびに、実体験を通じてまとめた
マニュアルを残してきた。・・・」
◆コンピュータ+気持ちのサービスが決め手
「コンピュータは私たちにさまざまな可能性をもたらしてくれた。かつての産業革命が
私たちに”力”を与えてくれたのならば、コンピュータ革命は私たちに、”知恵と効率”
を与えてくれようとしている。そうした・・・」
◆成長企業の組織のあり方とは
◎ミニ会社の形式的な職務分担は企業力を弱める
◎社員が30人を越えたらマネジメント意識を持て
◎社内ルールの確立が組織の乱れを防ぐ
◆成功するベンチャー経営者の共通点は、大きく四点ある
◆挑戦する気持ちを抱け
◆運とツキに恵まれる方法
★一流の起業家のお話は、やっぱり、面白いです。
夢の部分と、実務的なノウハウの点が、バランスよく書かれていて、
年月が経っても、読み継がれると思われる1冊です。
経理という部署の役割についても、100人以上の組織における、重要性を述べています。
ホテル業の参入や、航空会社の新規設立、あるいは、
証券会社の買収など、冒険的なチャレンジばかりが目につきますが、
本業の旅行業では、バブルの賃料高騰期に一時的に新宿を縮小したり、
ハワイへのパッケージツアーに参入しなかったりと、
ランチェスターの『弱者の戦略』を、几帳面に守っていたことが理解できました。
本日は、この辺で。