『後継者 (単行本) 』安土 敏 (著)
出版社: ダイヤモンド社 (2008/3/7) ISBN-10: 4478004374
目次
第1章 創業者の死
第2章 欲惚け
第3章 社長の変身
第4章 大店立地法届け出
第5章 流通学者
第6章 対決
第7章 意思決定会議
第8章 カゲロウの本領
第9章 疑心暗鬼
第10章 信頼回復
第11章 競合対策
第12章 恋心
第13章 決戦
第14章 初戦
第15章 決戦体制
第16章 勝利
『「お前は分かっていない。父親が事業を興してくれて、息子のお前が、その後継者を
約束されているということがどれほど幸せなことか。お前の学生時代の友人たちを
見ろ。お前より優秀だった連中が、一介のサラリーマンになって、下げたくない頭を
下げ、妥協したくない妥協をして毎日を生きている。すべて家族のためだと思って、
安い給料でも、つまらない仕事でも我慢しているのだ。それに比べて、一体、お前は
何だ。自分の幸せを知らず、知ろうともしていない。だから、そういう幸せな立場に
生まれてきたことの責任も感じていない。罰が当たるぞ。いいな。いまが人生を
考え直す最後のチャンスだ」』
『「先生もゴルフをされるんですね」
「でも、不満足なところばかり多くて」
「それはだれでもそうです。ゴルフというのはそういうゲームだ」
浩介は我が意を得たりという顔である。
「ゴルフは止まったボールを打つので易しそうに思うが、実際はとてもむずかしい。
そこがとても不思議なところだ」
「スーパーマーケットと同じだと、亡くなった浩二郎社長がおっしゃってました」と
詠美が言った。
「父が?そりゃどういうことだ」と浩介が驚きの声を上げた。』
『・・・フジシロは、スーパーマーケット業界でも先進的な企業として常に技術開発の
先頭に立ってきた。標準店の売り場規模の拡大という点でも業界の先頭を切ったし、
いち早く中途半端な衣料品から撤退した。これは先見の明ありと称えられた。生鮮食品
の作業についても、組織的な仕事に向かない職人気質を追放し、標準化された作業法を
考案して、そのための作業場も整備した。だが、最近になって、それではまだ足りないと
気づいた。私は、作業場と売り場とをもっと密接に結び付けたいのだ。
具体的に言えば、作業場のなかの「作り溜め商品」をゼロにしたい。つまり、理想は
「売り場に陳列された商品」と「作業場の冷蔵庫に在庫された原材料」のほかには、
「現在、加工作業中の商品」しかないという状態だ。そうなれば、売り場に出て行く
商品は「すべて作りたて」の商品ということになる。売り場は品切れゼロのまま、
鮮度は最高という状態になる」
「そんなことができるのですか」と私は伺いました。
「・・・・トヨタ自動車のカンバン方式というのがある。いわゆるジャストインタイム方式
だ。部品を積み上げてそれで自動車を組み立てるのではなく、自動車を一台組み立てたら
1台分の部品を持ってくるという逆転の発想だ。それをスーパーマーケットの生鮮食品の
加工作業に適用したい。そうすれば《品切れゼロ》と《最高の鮮度》が両立できる」』
★ずいぶん、スーパー業界に詳しい人が書いた小説だなぁと、感心してましたら、
元サミットの社長にして、オール日本スーパーマーケット協会会長であり、
ご著書の、「小説スーパーマーケット」は、あの伊丹十三監督の「スーパーの女」の
参考文献だったとのこと。
また、
このお話では、ゴルフ馬鹿の二代目が、父親の突然の死をきっかけとして、
メンターの下、スーパーの経営の面白さに目覚め、
乗っ取りと闘うストーリーです。
小売業・スーパーの方、二代目にお勧めです。
本日は、この辺で。