『アルファドッグ・カンパニー (講談社BIZ)』ドナ・フェン(Donna Fenn)(著)
出版社: 講談社 (2007/9/26) ISBN-10: 4062820218
目次
第1章 群れの先頭に立とう
第2章 顧客の心を奪い取ろう
第3章 従業員の心をつかめ
第4章 地元密着に賭けよう
第5章 「ありきたり」にイノベーションの息吹を
第6章 ブランドを売り込もう、社外に、そして社内にも
第7章 「村」をつくろう
第8章 自己革新の道を進もう
第9章 アルファドッグのDNA
『 ”アルファドッグ”というのは、リーダーのことだ。その並はずれた発想や行動に触発され、周りの人たちは
彼らについて行こうという気にさせられる。人々が触発されるのは、企業がつくったり売ったりする製品やサービス
そのものではなく、企業の生きざまであり、その企業のリーダーがビジネス戦略を実行する見事な手腕なのだ。
したがって、本書に登場する”アルファドッグ”は、ソフトウェアの開発者であってもよいし、あるいはタイヤの
販売店、あるいはアイスクリームのメーカーであってもよいわけだ。』
『 おそらく、ビジネスの数だけビジネス戦略は存在するだろう。けれども、本書「アルファドッグ・カンパニー」
では、以下にあげる重要な八項目に絞り込んでいる。
・顧客サービス
・従業員の参加
・テクノロジーの利用
・コミュニティとのつながり
・イノベーション
・ブランド力の強化
・連携・協力関係の構築
・自己革新
こうした戦略を見事に実践する手法をどこよりもうまく教えてくれる、規模が小さいながらも、
企業家精神にあふれる企業を探し求めるために、私は自分が持っている膨大な人のつながりのデータベースに
目を通し、さらに友人や仲間にも私の条件を伝えた。私が探していたのは次のような存在だ。
・ローテク業界の企業 つまりアメリカ国内(あるいは日本国内)のどこにでも見られるような種類のビジネス。
・自己資金で、あるいは伝統的な資金調達で経営されている企業 売上高は一億ドル以下で、売上高の
着実な増加や優秀な過去の収益の実績が認められる企業。ただし、私の選んだ企業はどこも、業績の数字を
率直に開示してはいるものの、非公開企業であるために、そうした数字が客観的に検証されているわけでは
ない。
・イノベーター(革新的)、あるいはリーダーとして、業界からの非の打ちどころのない評判を得ている企業
・企業自身が説明する戦略そのものとは関係なく、実際に働きやすい立派な職場になっている企業
というのも、どんな企業であれ、その成功が持続できるかどうかは、従業員にかかっているからだ。
・少なくとも10年以上続いている企業 好景気と不景気の両方を経験しているという条件を考慮したからだ。
何度か痛い目に遭っていない企業には、私の食指は動かない。』
◆これぞ、願ってもない最高のゲームだ
『「ビジネスから生み出される本当の製品は、ビジネスそれ自体なのだ。(中略)起業する場合のモデルは、ビジネスの
具体的な成果よりも、その成果を生む手法・プロセスの方に重点を置くべきだ。つまり、世の中に普及した製品が
重要なのではない。重要なのは、そうした製品を生み出す手法の方なのだ」
だから、日用品化した製品であふれかえっている市場にあって、経営者は、自分たちの製品やサービスを生み出し
ながら、同時に、あらゆる側面から自分のビジネスを競争のための武器として検討しなければならない。従業員を
採用し、職場に留め、顧客にサービスを提供し、社内の情報を集めて共有し、業界の中でコネを広め、テクノロジーを
活用する。こうした自分の仕事を一つ一つこなすための手法を、戦略的な観点からもう一度考え直してみるべきであり、
また、それは可能なはずだ。何事もその場しのぎの姿勢でやり過ごす余裕など、もはや存在しない。』
◆全員が経理情報を共有できる強み
『 ドロシー・レインの社内にはイントラネットが整備されており、メインはこれを「業界で最高のできばえ」と
思っている。従業員なら誰でも接続して、会社の主要な数字を簡単に確認し、毎週、前年同期の数字と比較できる。
具体的には、総売上高、部門別売上高、時間あたりの販売金額、労務費、売上高に占める給与の割合などだ。
ドロシー・レインのCFO(最高財務責任者)、ケント・ディムバスは言う。
「店の奥にいる配送担当者でも、会社の売上高を知っているはずですよ」
ベーカリーのマネジャーが、精肉部門にいる同じ立場のマネジャーと、たわいもない賭けをすることもある。
たとえば、週の売上を前年同期比で最も伸ばした人に10ドル、といったような賭けだ。「店の中では大いに
盛り上がっていますよ」と、ある従業員は話してくれた。
「情報は力なり、ですよ。だから私は、ここで働いている人たちにできるだけ多くのことを頭に入れておいて
ほしいのです」
とメイン。
「誰だって、自分が勝負しているときの得点を知りたいものでしょ」
とはいっても、メインは、イントラネットにただ情報を放り込めばそれで終わり、というのではなく、従業員に
それをしっかりと読みとる時間を見つけてほしいと思っている。
ノーマンとカルビンのメイン親子、それにCFOのディムバスは、四半期ごとにマネジャーや部門長を六人程度の
グループに分けてミーティングをし、ドロシー・レインの総合的な収支状況を検討することにしている。さらに
年に二回、正社員全員と同じような会合を開く。メインは二週間を費やして十五回のミーティングを開き、
そこでスタッフに業界の最新情報を伝え、ドロシー・レインの利益に直接影響を与える最も大切な項目を分析して
見せている。
たとえば利益。これは一貫して議論の大きなテーマになってきた。ドロシー・レインの最も新しい店舗が、
2002年3月の開店時から2004年9月までの間、同社の赤字決算の元凶になっていた。また、健康保険の
コストも利益を圧迫していた。・・』
★ここには、7社の事例が出てきますが、
とりわけ、最初の「徹底したサービスで全米一の座をつかんだ自転車ショップ」の話は、非常に参考になりました。
商品ではなく「客を喜ばす気持ち」を売る。子供の自転車を売り、その代替えを売り続け、その子供が成人して、
大人用の自転車を購入する頃には、他の自転車店へ行こうという浮気心を全く起こさせない。
そんなサービスのオンパレードです。しかも、サービスの本当のコストを計算する。だから、利益を上げ続ける
わけです。
他にも、ハーレダビッドソンの全米トップのディーラーの、話も魅力的でした。
経営者や、マネジャー、全てのビジネスマンに、ぜひ、お勧めです。
金額以上の価値は、必ず、見つかるはずです。
本日は、この辺で。