鶴蒔 靖夫 (著) 『革新への挑戦―不動産流通の常識が変わる』
IN通信社 ; ISBN: 4872182731 ; (2006/04)
目次
第1章 家を建てるということ
第2章 理想のわが家を創り出す革新のビジネスモデル
第3章 顧客本位の「家創り」を実現
第4章 新世代の不動産・住宅サービス企業・ニード
第5章 起業家・堀本清人の「トライアングル・ハッピー」
第6章 不動産流通のあるべき姿
◆首都圏に家を建てる
『一時は、庶民には”高嶺の花”といわれていた都市圏の戸建住宅は、
以前と比べれば低い価格に落ち着いてきたといえる。』
『まず、平成16年に戸建住宅を建てた世帯主の年齢は、団塊ジュニア世代が多い。
前年の平成15年の調査データと比べると、二十歳代、三十歳代前半の若い世代の
取得者が増加した。戸建て取得者の平均年齢は平成16年は36.3歳で
、 平成15年の36・6歳よりも若干であるが若くなっている。』
『戸建てを取得した世帯の年収で見ると、平成15年の調査では600万~800万の
層が30・5%ともっとも多かったのに対し、より低価格の物件が増えたという
要因からか、平成16年は400万~600万の層が33・3%ともっとも多かった。』
◆土地は「探す」から「創る」へ
『このサービスについて、ニードの社長・堀本清人に聞いた。
「いままでの不動産業界の常識では、出した売地広告に対する問い合わせのうち、
実際に成約にいたる割合はわずか5%にすぎませんでした。成約にいたらなかった
残りの95%は、”欲しいものがないから買わなかった”のです。この三割のお客さまに
私たちは注目しています。お客さまにとって、欲しい住宅用地がないのなら、私たちが
見つけ出し、創りだせばいいという発想です。従来、不動産は現存物件から選ぶしかない
というのが一般的な考え方でしたが、これは、売り手側の都合をお客さまに押しつけて
いるにすぎません。本来、・・・・』
◆地域に密着した住まいを創る
『・・顧客が要望するニーズ(エリア:希望駅、予算、広さ、:建物面積・間取り)を
聞いた仲介会社の営業担当者は、携帯電話から「ニード・ネット」にアクセスし、
画面上で、顧客ニーズの内容を入力する。そして、画面の最後に出てくる「登録」を
クリックすれば、顧客ニーズの内容がデータベース化される。
ニードネットでは、土地の広さや形状などの特徴によってグループ化し、データベース化
された顧客ニーズ情報と照合。そのニーズに応じて土地区割りシステムで区割りし、
土地の価格を設定していく。
このようにニードは、エリア内の土地を複数の顧客ニーズに組み合わせて最適な
価格帯と面積に分譲するのである。不動産会社側が一方的に住宅用地の面積と価格を
決めるのではなく、あくまでも顧客の要望に合わせて土地を区割りする。
こうして創り出された、顧客に最適な物件情報が、営業担当者にメールで返信される。
この物件情報を営業担当者が顧客にフィードバックする。・・・』
◆トライアングル・ハッピーを目指す
『要望していたエリアや住空間を購入して生活している顧客の満足、その土地を提供した
売主の満足、ニードの事業に関係した会社(販売仲介会社、仕入仲介会社、施行工務店、
金融機関など)の満足を同時に追求していくこと、それが同社の理念である
「トライアングル・ハッピー」なのだ。』
★ゴールデンウィークに紹介するに相応しい本かどうかは分かりません。
ただ、住宅や不動産業界にとって、この時期は稼ぎ時で、見込み客の多くを集客します。
ですから、住まいのことを考える方や、新しいビジネスモデルを考えるには、参考になりそうな1冊です。
建売住宅や売建住宅と呼ばれる、商売があります。
ミニ宅地開発や、狭小3階建て住宅も、都心では増えてきました。
土地というのは、当たり前ですが、他に一つとないものを売っています。
とりわけ、大きな土地は、高額となり買い手がつきにくい場合もあります。
開発業者が購入した場合は、等分に区画整備し、ミニ開発するのが一般的な手法だと思います。
近所で建売となった物件も、均等に3等分されていて、日当たりや角地などで若干の価格設定がちがったとしても、
大きく金額は変わらないでしょうし、間取りに至ってはほぼ同じです。
そういった意味では、見込み客の情報から、土地割りを行うという手法は、
ありそうでなかった、コロンブスの卵的な発想なのかもしれません。
非常に高い金額の商品の割には、
デベロッパーの都合を押しつけていた従来のやり方を、
顧客指向に変えて、成功した事例といえそうです。
本日は、この辺で。