ここ数年で、会計ソフトのクラウド化が格段に進んできているようです。
今ではクラウド上のみで稼働する会計システムも多く利用されるようになりました。
弥生会計は高いシェアを維持している会計ソフトですが、1987年の初版ではもちろんクラウドに対応していませんでしたが、
2014年からオンラインサービスが開始されています。
ここでは、弥生会計のクラウド会計ソフトとしての側面、特にスマート取込にスポットをあててみていきます。
なお、ここで紹介しますのは弥生会計19をもとにしています。
【本記事の想定読者】
・経理部門における経験者(会計システム経験者)
・中小規模で複数の業務がある会社、業種は問わない
・財務会計だけでなく、管理会計の作成を検討する会社
【もくじ】
導入
1、クラウド会計ソフトとは
2、自計化とは
3、クラウド会計ソフトの安全性
4、弥生のスマート取込とは
5、まとめ
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クラウド会計ソフトとは
そもそもクラウド会計システムとはなんでしょうか?
クラウド会計システムとは、インターネットの環境があれば、いつでも、どのパソコンでも会計処理が可能な会計システムのことです。
そして、クラウド会計を利用するためのソフトをクラウド会計ソフト、または、クラウド型会計ソフトと呼んでいます。
従来の弥生会計やその他の会計ソフトは、CDを購入してパソコンにインストールし、会計データを打ち込み、
そのインストールしたパソコンにデータを保存するというのが一般的でした。
これまではパソコンのクラッシュでデータが消えてしまうことも考えられましたし、税制改正のたびに都度対応する必要がありました。
一方、クラウド会計では、アプリケーションが入ったCDは不要であり、インストールする必要もなく、
入力したデータを会社のパソコンに保存する必要もありません。
クラウドの場合は、ネットワーク上にあるサーバにソフトウェアやデータが入っており、
必要の都度、利用者はネットワークを通じてサービスを利用することができるのです。
たとえば、パソコンを買い換えてもインターネットさえ接続すれば、仕訳の続きが入力できるのです。
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自計化とは
このクラウド会計ソフトで最も注目すべきがデータの自動取込です。
インターネットからのデータ取込はずっと以前から行われていました。
例えば、インターネットバンキング等から入出金データをダウンロードして、
会計システムに手動で取り込むといった使い方は一般的に行われてきました。
しかし、契約のある銀行口座やクレジットカード会社のサイトにクラウド会計ソフトが自動的にログインし、
情報を取得し、仕訳として取り込む「自動取込」は経理担当のルーチンを大きく変える機能です。
いわゆる「自計化」です。
この記事で自計化とは、
会計処理の効率化のために仕訳処理において必要となるデータを会計ソフトに自動的に入力していく運用方針を指します。
広義では、企業が日々発生する営業取引の内容を、
税理士事務所などに依頼することなく、自社内で記帳(会計ソフトに入力)することを指します。
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クラウド会計ソフトの安全性
クラウド会計ソフトを利用するにあたっては、安全性への配慮は不可欠です。
自社とは離れたサーバに会計データやプログラムがあることが、安全性確保につながるということは比較的理解しやすい点です。
しかし、「ネットバンキングのパスワードやクレジットカード番号がクラウド上に流出するのではないか?」という不安はどのようにして払拭できるのでしょうか?
この自動取込が実現した背景には、最近は金融機関ではほとんどが、
入出金を伴う取引に「ワンタイムパスワード」が必須となったことが挙げられます。
このワンタイムパスワードが流出することは、まず考えられません。
また、クレジットカード番号は登録せずに、クレジット明細閲覧用のパスワードを入力することになります。
そして、いきなりすべてを自計化に踏み切る必要はないのです。
4、弥生のスマート取込とは
例えば、弥生会計のスマート取込では、銀行明細やクレジットカードのデータを取り込み、
会計データに自動仕訳して、弥生会計に転送します。
さらに、レシートや領収書をスキャナーで読み込むか携帯電話で写真を撮って連携させると、
データ内容を分析して仕訳明細を作成します。
会計担当者は、その仕訳明細について勘定科目等の修正を加え、仕訳として登録します。
このレシートや領収書などの証憑については、弥生会計の仕訳からいつでも呼び出して確認することができます。
さらにクラウド上に会計データがあるので、例えば会計事務所からも仕訳の内容を確認することができ、
自計化で間違った伝票があれば税理士側から修正してもらうことも可能です。
このように弥生会計であれば、例えばレシートだけの自計化もできます。
しかも一部のレシートだけでもいいのです。
次に、クレジットカードだけ登録し、費用の計上のみ自動仕訳を起こし、
引落しは従来どおり金融機関のダウンロードデータを使うこともできます。このように段階的な自計化で問題ないのです。
例えば、はじめは会計担当の作業量の軽減のみを目指し、徐々に経営者と会計担当の双方で納得できる自計化を着地点とすればよいのです。
5.まとめ
クラウド会計ソフトによる自計化は、今後ますます進むものと思われます。
課題としては、自動で取り込んだデータを仕訳にする際、勘定科目や摘要を根気よくルール付けしなくてはいけないことと、
振替伝票による複雑な仕訳には対応しきれないことです。
ここで弥生会計の自計化についてまとめますと、
- 会計ソフトのクラウド化が進んできており、業務効率化のため利用者が増えている
- 弥生会計はクラウドに対応しており、スマート取込という機能を持っている
金融機関との自動連係、レシートや領収書などとの連携の2大機能をもつ
- 自計化は段階的に導入し、まず、会計担当者の作業量軽減のためにやってみる
となります。
自計化が進むと、例えば資金繰りの情報がすぐに得られ、すばやい経営判断が可能になったり、
会計事務所に記帳を依頼せずに、さらに経営相談等の高度な依頼にシフトすることができます。
伝票数の多い経営者ほど、自計化は検討に値する機能だといえるでしょう。