ニック・リーソン著(戸田裕之訳)「私がベアリング銀行をつぶした」新潮社
ベアリング銀行は1763年設立された世界初の「マーチャント・バンク」で230年の歴史
をもつ名門銀行だった。
19世紀には、王室の銀行となり、一族は貴族となった。
目次
1、ロンドン時代
2、ベアリングズ入社
3、運命のエラー・アカウント8888
4、内部監査
5、増え続ける損失
6、さもなくば破滅か
7、文書偽造
8、誰も私を止めなかった
9、シンガポール脱出
10、逮捕
11、幹部の弁明
1995年2月23日木曜日、ニックは自分の損失の大きさと架空口座がばれるのを覚悟し逃亡した。
それは1992年にわずか2万ポンドの損失を隠す為に始まった。
ー担当者が顧客の買いと売りを間違えて、日経平均先物を取引してしまったことが原因だった。
ともかくわれわれは全員を守る手立ては考えたのだ。最優先すべきは損をなんとかすることであり、私はそのために先物取引を試みるつもりだった。
ー損失を取り戻す為、さらなる架空取引に手を染めていく主人公
簡単な帳簿操作を行なって架空口座の欠損を減らし、預金残高を増やしていった。
ー架空口座の存在と損失を隠す為、帳簿の粉飾に傷を広げていく。
監査の報告として、売買担当とバック・オフィス双方の責任者を同一人物が行なっていることが問題であり、バックオフィスには別の責任者を置くべき、と指摘。
ー会社側も架空取引に発見するチャンスは何度となくあり、通常やるべき手順を徹底していれば、必ず発見されるはずだった。
日付は1993年12月30日、損失は、77億8000万になっていた。
ー損失は、雪達磨式に膨れ上がり、もはやクビどころではすまない状況に追い込まれる。
「そうだ。そして、それを記帳する前と記帳した後の通常の報告書をプリントしてくれ。取引の前の分は試算表以外のすべてをプリントし、
取引の後は試算表だけをプリントするんだ。」
ー仕訳明細帳は粉飾まえのものを使い、粉飾データを記録後に試算表と元帳を差し替える。あまりに単純な手口。
驚いたことに、誰も私を止めなかった。ロンドンは私が数字を捏造していることも知っているはずだった。本社は毎日の資金要求がとんでもない額だと知っているはずだったが、それでもその資金を送り続けた。
ー最終的には、帳簿上の利益はいくらでも操作できたが、取引を行なうための資金が尋常ではないくらい膨らんでいく。本社の上層部を含め誰もがおかしいと思いながら、もはや止めるこのとできる人間はいなかった。
私は妻にささやいた。「あの新聞を買って、代わりに読んでくれ。ぼくにはとうてい読めないよ。ベアリングズが破産した」
1995年12月2日、ニック・リーソンは6年半の刑を宣告された。
◆このお話しは、獄中手記という形で、実話にもとづく物語となっています。
ですから経理実務に役立つお話しはありません。
しかしながら、一人の人間が行なった不正行為で、会社が倒産したという事実と、
分かっていながら止めれなかった主人公の心理は、どちらも私の記憶の底に残りました。
ちょっと重いテーマとなってしまいました。
実はそれもあり、前段はちょっと軽めのお話しでバランスを取ろうと考えたのですが!
昨日の「今年はフグが食べれるように頑張るゾ!」へのコメントを加筆修正して、再利用させて頂きました。
それでは、また。