『繁盛道場―愛されるお店をつくる二十二の法則』中島 武(著)
出版社: 日本経済新聞出版社 (2007/08) ISBN-10: 4532313422
目次
第一章 店を生み出す
第二章 お客様の心をつかむ
第三章 ブランドをつくる
第四章 人を育てる、店を育てる
◆なぜ、私は飲食業が好きなのか
『 大学卒業後は一度は大手企業に就職したものの、一ヶ月で辞めてしまい、紆余曲折を経て
とある金融会社に勤めることになった。当時は経済成長も右肩上がりで羽振りも良かったが、
何かむなしい思いはぬぐえない。1983年、独立した私はファイナンスと不動産を柱とした
会社を設立。バブルとともに成長し、バブルの崩壊とともに会社も苦しくなった。会社は
莫大な負債を抱え、まったく新しい事業を興す必要に迫られた。
そのとき、私は改めて自分の原点を見つめ直してみた。「人の集まる夢のある場所をつくりた
い」。そう強く感じて選んだのが飲食業だったのである。
当時、42歳。もうあとのない再出発だった。』
◆業態の拡大、そして現在へ
『 こうしてみると、中国人コックたちと言い争ってばかりのようだが、私はそこから実に多くの
ことを学んだ。それは、私自身が料理人と正面からぶつかることで、新しい料理をつくっていく
という、際コーポレーション独自のやり方を確立したことである。中国老醤を使った真っ黒な
「麻婆豆腐」、辛く力強い味を追求した「黒胡麻坦々麺」、フカヒレは熱いものという常識を
くつがえした「フカヒレ冷麺」、あるいは土鍋でフカヒレを煮込んだ料理など、どれも彼らとの
闘いから生まれたものである。
料理の修業も受けていない私が自分で料理をつくり、プロのつくったものをチェックし、
料理を、味を改良しているような企業は、おそらく際コーポレーションだけだろう。それまでの
料理人と経営者との間にあった”超えてはならぬ一線”を私は知らぬ間に超えていたのだ。さら
に私は、ホールスタッフにメニューを考えさせることも行った。お客さんの立場で味をチェックし、
疑問があればすぐに料理人に伝える。そういうフラットな環境をつくることが、ひいては
お客様へのサービスになると考えたのだ。』
◆しくみより、趣味を極めよ
『 オーナーの趣味、嗜好を全面に出していくことで、店にオーラが出るなら簡単じゃないかと
思われるかもしれない。しかし、重要なのはその中身だろう。
私は少し前に、ドイツのレストランをプロデュースする機会があったのだが、かつて極寒の
ドイツのアウトバーンを走ったときのことを思い出しながら、なぜかふっと突然思いついたこと
がある。それは、ドイツが発祥の地と言われるくるみ割り人形を集めよう、というアイデアである。
アンティークのものから新しいものまで100体くらいを集めて、店に飾るのだ。そうだ、
ヨーロッパにくるみ割り人形を探しに行こう。そう思い始めると、私の気持ちはどんどんくるみ割り
人形に傾斜していき、いてもたってもいられなくなる。「くるみ割り人形を並べる」というのは、
つまるところ私の趣味、道楽である。料理とは関係ないのだが、店づくりとは、案外こんなふうに
できあがっていくものなのだ。
だから、趣味や道楽とはまったく関係のないところで、店づくりをしようと考える人の気持ちが
私にはよくわからない。ビジネス界はシステムばやりである。飲食業界も例外ではない。最近は
やたらに「しくみ」をつくることに熱心な人たちが多い。日本人は、概してどういうしくみを
つくったら儲かるのかを考えるのが好きだ。そして、そういう人が賢いと思われている。だが、
本当にそうだろうか。
年間予算がきっちり決められたようなシステムの中では、ふと思いついてくるみ割り人形を
買い付けに行くことなどできない。おもしろいことは何もできなくなる。くるみ割り人形を探す旅に
出れば、そこでまた新しい何かに出会う。・・・』
◆結局、大切なのは基本
『 店長の仕事は毎朝起きたときから始まっている。今日やるべきことをきちんと認識し、店に出る。
そして、まず店の前に立って、店のたたずまいをチェックする。掃除は行き届いているか、レジ周り
は整理整頓されているか、晴れているのに傘立てに傘が残っていないか、飾られた花は旬のものか、
店内の椅子やテーブルはきちんと並んでいるか、厨房は整理整頓され、衛生管理がしっかりなされ
ているか、細かく確認する。・・・』
★飲食業で起業する、あるいは、マネージャーをしている人には、マストの1冊です。
毎回ながら思いますが、
飲食業の仕事は、傍から見ていて、分かりやすいので、
ビジネスの勉強としては、異業種ながら、とても参考になると思います。
とりわけ、この本の、リーダーシップ論や、
経営者のひらめき、こだわりが、店のオーラを作っていくというのは、先日の主藤 孝司さんに繋がる
点もあり、シンクロを感じました。
本日は、この辺で。