『大逆転の経営 』エイドリアン・J・スライウォツキー(著)
出版社: 日本経済新聞出版社 (2008/4/18) ISBN-10: 453231397X
目次
日本語版への序文
序章 リスクを機会へ
第1章 オッズ(成功確率)を考える――90%正しい=0の理由
第2章 なぜ顧客に驚かされるのか?――顧客の求めているものを推測ではなく理解する
第3章 業界の分岐点――移行リスクとダブル・ベットの秘密
第4章 無敵のライバル――強敵出現で生き残る方法
第5章 ブランド――パワフルで誇り高く、傷つきやすいもの
第6章 業界全体の低迷――誰一人儲からないとき
第7章 成長が止まるとき――新しい需要形態に投資する
第8章 宝の島――リスクを成長へ
伊藤元重教授による解説
◆これから起こるできごとを感知する
『 理由は何であれ、初期の実践者たちが手にした驚異的な見返りを思えば、戦略リスク
マネジメント術は今後数年間で急速に進化するだろう。実践する企業は、企業全体が
より真剣に将来について考え始め、様々な問題をコストがそれほど嵩まない早い段階で
検知できることが分かった。また、製品の「欠陥ゼロ」を目指すごとく、「驚きゼロ」
のビジネスデザインを目指すことができること、そして、戦略リスクマネジメント術に
よってライバル企業に大きく水をあけられることが分かったのである。
その実践者たちは個人レベルでも自分の変わり方に気づき始めている。戦略コストに
ついて徹底して考えることはかなり
より真剣に将来について考え始め、様々な問題をコストがそれほど嵩まない早い段階で
検知できることが分かった。また、製品の「欠陥ゼロ」を目指すごとく、「驚きゼロ」の
ビジネスデザインを目指すことができること、そして、戦略リスクマネジメント術によって
ライバル企業に大きく水をあけられることが分かったのである。
その実践者たちは個人レベルでも自分の変わり方に気づき始めている。戦略リスクについて
徹底して考えることはかなりタフな作業だ。ロベルト・ゴイズエタ(コカコーラの元CEO)
の言葉が浮かんでくる──「人はある問題を汗をかくほど考え抜くことができる」
我々が直面する大きな戦略リスクを一つ残らず汗をかくほど考え抜くことによって、
思考方法が変わってくる。熟練した実践者はほとんど預言者の領域に入ったと感じ始めている
のだ。』
◆プリウスのオッズを変えたトヨタ
『 「情報への平等なアクセス」は内山田のG21における行動ガイドラインの一つだった・・・
トヨタの通常の製品開発プロジェクトでは、エンジニアが問題を発見するとまず上司に報告
する。ここで解決できなければ、チーフエンジニアに報告され、そこから問題の影響を
受ける可能性のあるエンジニアたちに通知がいく。これは時間を無駄にするプロセスだった。
だが、プリウス・プロジェクトでは、問題を発見したエンジニアがすぐにメーリングリストを
使ってメールを出す。そして、メールを読み、解決策が分かった人は誰でも即座に必要な情報
を流すことができた。
この種のコミュニケーション方式を視覚的に喩えると、ピラミッドやネットワークではなく、
むしろ「球体」と言うのがふさわしいだろう。十五世紀のキリスト教神秘思想家ニコラウス・
クザーヌの神の定義に出てくる、「境界はどこにもなく、中心はどこにでもある」球体だ。
メーリングリストに載っているメンバーは誰もが、行動の中心から同じ近さに位置し、ある
時点では「中心になり」、急を要する問題が持ち上がればグループ全員から力を引き出すことが
できる。
階層的な指揮管理式コミュニケーションモデルを画期的で平等なアクセス型に切り替えること
によって、トヨタは明確なメッセージを発信した。──G21に関連するありとあらゆる問題に
最も優れた知力を集結せよ、と。』
◆アップルとipod
『 ジョブズはオッズを高める仕事に取りかかった。第一段階は途方もなくタイトなスケジュール
を組むことだった。プリウス開発時のトヨタと同じだ。通常、この種の家電プロジェクトに
妥当な開発期間は一年半強といったところだが、ジョブズは九ヵ月で完成させると決断した。』
『 次に力を入れたのは社員間の対話だった。ジョブズは一連の段階的開発(ステップAからB、
BからCといったやり方)を良しとは考えていなかった。半導体チップ、ソフト、デザイン、
マーケティング、製造などすべての分野の人間が互いに常に話し合いながら、並行して、
同調しながら進めていくやり方を好んだ。
これに先立つこと数年前、海の向こうの名古屋でもトヨタが同じようなことをしていた。
エンジン、トランスミッション、バッテリー、スタイリング、電子機器といったすべての
部門の人間を集めた「大部屋」の設立だ。彼らは常に顔を合わせ、「球体型」eメール
ネットワークを使って平等に情報アクセスできた。カリフォルニア州パティーノのアップル
でも、多少の違いはあったといえ、似たような方法が採用されていた。
全員が一緒に取り組むという状況は決して楽園ではない。独立精神に富んだ人々は得てして
人の意見に同調しない、あるいは強行に反論する傾向がある。こうした集団には、レフリー、
タイムキーパー、リード・ディベーターが必要だ。対話を促すといった管理面での心理的
コストは金銭的なコストを遥かに上回り、オッズ向上におおいに威力を発揮する。実際、
多額の資金を投入しても、対話促進という心理的コストをかけなければ、確実に失敗すると
言っても過言ではない。金銭的な投資に感情的な投資が加われば、プロジェクトの成功確率は
破格に上昇する。世のプロジェクトマネジャーというものはお金は使うが、ジョブズのように
精力と知力を傾け、強力に対話を促そうとはしない。これでは失敗率が高いいのも不思議では
ない。』
◆戦略リスクマネジメントシステムを作る
『1 リスクを特定し、評価する。
2 リスクを定量化する。
3 リスク低減のアクションプランを立てる。
4 上向きの可能性を特定する。
5 リスクマップを作り、可視化し、優先順位をつける。
6 投資判断を調整する。』
★前半部分のプリウスとアイポッドをどうやって成功させたかという、
話を興味深く読みました。
正直言って、
世界のトヨタが、金に物を言わせ、
最先端の技術を集めたら、成功するハイブリッドなんて、
できて当たり前で、
そこに、創造性なんて、ないじゃないかと、
常日頃、批判的に考えていたので、
まるで、
タイムマシーンに乗り込んで、
開発段階からの、成功可能性を探ると、
非常に、リスキーな決断を行い、
ジェットコースターよりも、猛スピードで、障害を押しのけ、
開発・商品化したことで、
競合他社を寄せ付けずに、
成功したことが分かりました。
どうやって、
スピードを高めるかのヒントを得ました。
本日は、この辺で。