『ソニーを創った男 井深大』小林 峻一(著)
出版社: ワック (2002/09) ISBN-10: 4898310427
目次
序章 文化勲章をもう一つ
第1章 井深大の原風景
第2章 好奇心の発露と孤独と
第3章 電波に魅せられた少年
第4章 脚光を浴びる学生発明家
第5章 植村泰二とPCLの時代
第6章 前田多門と日本光音の時代
第7章 先端兵器開発の時代と盛田昭夫
第8章 東通工に込めた理念と戦略
第9章 ソニーのスプリングボード
第10章 井深大のニューパラダイム
◆「メカノ」に熱中する
『 井深大は、そのまま日本女子大学校付属豊明小学校に進学した。
大が「メカノ(Meccano)」というおもちゃに出くわしたのは、この時期である。
ひとことでいえば、これは金属性の組み立て玩具。日本ではまだ馴染みが薄いが、欧米ではポピュラーな
おもちゃで、昔から熱烈なファンも多い。現在でも愛好者団体が刊行物を出したり、インターネットによる情報発信も
盛んに行なわれている。
出会いは、坂田真太郎という人の家を訪ねたときのことだった。坂田は日光電気青銅所時代、父タス甫(たすく)の
部下にして親友であり、甫の死後も、残された母子のことをなにかと気遣ってくれた人物である。彼は、ヨーロッパ
帰りのお土産として自分の息子ために「メカノ」を買ってきたのであった。
ところが息子は、このおもちゃをうまく組み立てるにはまだ幼すぎた。代わって、「メカノ」にかじりついたのが
大である。穴の開いた鉄板、ボルト、ナットなどを相手に奮闘し、ついにケーブルカーとか風車などを組み立てる
ことに成功する。
大はすっかりこのおもちゃに魅せられてしまった。欲しくなって、どうしても手放そうとせず、ひらすら駄々をこね
た。結局、大人たちが譲歩して、ピカピカ光る基盤、シャフト、真鍮の車輪、ボルト、ナットなどの入った、
ずっしりと重くて薄い箱は、大のものになった。
大は、サンプル画面を見ながら、夜も寝ないで片っ端から組み立てていった。途中までいくと、もう一級上のセット
を買わないと部品がどうしても足りなくなる。そこで、あるだけの手持ち部品を活用して、組み立て可能なものを
次々と工夫し考え出した。
「こんなに単純な部品から、こんなにいろいろな物が作れる!」
物を組み立てる楽しさが、新鮮な驚きとともに大の全身を満たしていた。』
◆「日本のデンマーク」の科学少年
『 町の中心部にも出かけた。一軒ぐらいしかなかった本屋では、よく「理科少年」を立ち読みしたものだが、
時計屋のショーウインドーを物珍しげにのぞきこむのもいつものことだった。小学二年のある日、その
ショーウインドーに電鈴(ベル)を見つける。それが無性に欲しくてたまらず、帰宅して祖父にねだった。
相当高価だったはずだが、ねばりにねばった末、電線、電池を含め一揃いを買ってもらった。』
◆井深が描いた理念
『井深が最初に手がけたのは、新会社の設立趣意書の作成である。この新会社とは、いうまでもなく昭和二十一年五月に
発足するソニーの前身・東京通信工業株式会社である。設立四ヵ月も前の一月には、早々と設立趣意書を書き上げて
いたのだった。』
『真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場の建設』
『不当ナル儲ケ主義ヲ廃シ、(中略)徒ラニ規模ノ大ヲ追ハズ』
『経営規模トシテハ寧ロ小ナルヲ望ミ、大経営企業ノ大経営ナルガ為ニ進ミ得ザル分野ニ技術ノ進路ト経営活動ヲ
期スル』
『従業員ハ厳選サレタル可成(なるべく)小員数ヲ以ッテ構成シ、形式的職階制ヲサケ、一切ノ秩序ヲ実力本位、
人格主義ノ上ニ置キ、個人ノ技能ヲ最大限度ニ発揮セシム』
『会社ノ余剰利益ハ適切ナル方法ヲモッテ全従業員ニ配分、(中略)会社ノ仕事即自己ノ仕事ノ観念ヲ徹底セシム』
◆テープレコーダーG型の教訓
『 テープレコーダーを売ろうとしても売れないのは、なぜなのか。思い悩んだ末に、盛田はひとつの結論に到達し、
重要な決断をするに至る。
「売るためには、買い手にその商品の価値をわからせなければならない。やっとそういう結論に到達したとき、
私は、自分がこの小企業のセールスマンの役割を果たさなければならないと考えた。私が販売のほうを受け持っても、
幸い革新的な製品の設計と開発に全精力を傾けてくれる井深氏という天才がいる」』
◆「永遠の少年」の巡礼行
『 青木と並び「気」の達人と称されるのが、西野皓三である。かつて由美かおる、金井克子などといったタレントを
世に送り出した西野バレエ団主宰者として知られていたが、その後、武道の世界に入り、西野流呼吸法を創始した。
青木と同様、人を飛ばすこともできるという。
盛田昭夫の実弟・盛田正明(当時、ソニー副社長)、入交昭一郎(当時、本田技研工業副社長)ら企業経営者も
続々通っていたが、井深も91年、ソニー役員から紹介されて西野を訪ねている。同席した佐古がその時の
模様を描写している。』
◆七十歳を超えてウォークマンを着想
◆近代科学を超えるニューパラダイム
『デジタルだアナログだっていうのは道具立てに過ぎない。今日明日のことをどうするかってことも大切だが、
ニューパラダイムの意味をもっと大きく捉えて考えてほしい。お客さまに満足していただく商品をこしらえる
ことは、人間の心の問題です。モノと心が表裏一体であるという自然の姿を考慮に入れることが、近代科学の
パラダイムを打ち破るいちばんのキーだと思う。こういったパラダイムシフト、つまり人間の心を満足させる
ことを考えていかないと、二十一世紀には通用しなくなることを覚えておいていただきたい・・・』
★知的障害者の娘を持つ親であることが、井深氏を教育や福祉の問題に直面せざるおえなくしたようです。
そして、
それは、わが子に不自由のない人生を遅らせるというに留まらず、
そうした境遇の子を持つ、親が集う場をつくり、
両親亡きあとも本人らが安心し生活していける生活の場をつくっていく活動となりました。
また、その人間的な触れ合いと、娘の存在そのものに、感謝されて言葉が印象的でした。
本日は、この辺で。
井深さんが書いた本田宗一郎さんの本がこちら
https://himico.co.jp/%e3%82%8f%e3%81%8c%e5%8f%8b%e6%9c%ac%e7%94%b0%e5%ae%97%e4%b8%80%e9%83%8e/
2020年3月15日追記
僕は、井深大さんから、最後の薫陶を受けたといわれるソニーの世代である、天外伺朗さんの経営者塾で勉強しました。
「天外塾」というタイトルで、今も募集しています。
ここで、井深大さんのエピソードも聞いたことがあります。
印象深いのは、ソニーがカラーテレビの開発で失敗して、倒産の淵にあったとき、
井深さんは、よく工場にいる、とある課長のところに通っていたそうです。
その課長は、古くからいる社員で、井深さんは悩み事があると愚痴をこぼしに行っていたそうです。
ソニーは、その後、『トリニトロン』のカラーテレビの開発に成功して、世界的企業に発展しました。
その活躍はみなさんご存知だと思います。
ちなみに、僕の師匠、天外さんは、ソニーで、
CDの開発、アイボの開発、スイカの開発に携わっていました。
井深大研究会編「井深大語録」小学館文庫です。
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目次
第1章 ものづくりの精神
第2章 技術の革新とは
第3章 経営・組織について語る
第4章 人間の育成
第5章 生き方を問う
第6章 父を語る 井深亮
◆目標のためには手段を選ばず
◎「あるとき井深さんは、微妙な塗装にはタヌキの胸毛がいいということを聞いてきた
んですね。これは近所ですぐ手に入るようなものじゃないんです。
ところが井深さんは探し回ってタヌキの刷毛を手に入れてくるのです」。
当時のことを回想して、木原は楽しそうに語る。つまり井深は、新しいものを作る
ときには何でも取り入れて、ひたすら進んでいく。
◆枠の中からどうやって飛び出すかが重要。技術に感性を結びつけると、
大きな飛躍ができる
「レオナルド・ダ・ビンチは大変な芸術家であり、夢想家であり、幻想家であった
わけですよね。感性というのは、技術に結びつけると大きな飛躍ができます。
やはり枠の中からどうやって飛び出すかということは、
そういうポイントだと思いますね」
井深はダ・ビンチを例にとって、技術と感性が結びついたときに、大きな飛躍(=新しい技術)
が生まれると発言している。
◆直観力を武器に
◎その筋が読めるか読めないか、いわゆる直感力が必要だ。
─ものづくりの基礎となる技術やアイディアに出会って、将来性があると直感すると、
井深は行動を開始した。昭和24年にテープレコーダーを作ろうと決意したのも、
直感からだった。
◆歩留まりの悪い製品に将来あり
◎歩留まりが悪いということは非常にいいこと。可能性があるということだからだ。
あとは努力あるのみ。歩留まりは必ず向上する。
①井深が新しい技術に出会ったとき、井深の中でその技術が感性と結びついて、飛躍を遂げる。
つまり、井深の閃き、直感が発想を生むのである。
②「○○を作ろう」という目標を立てる。このとき、その技術についての下地があるかないかは
全く問題としていない。〈人真似をしない〉のが井深のやり方だ。
③社員たちに自分のアイディアを話し、ものづくりを開始させる。このとき、しばしば社員たちは
井深の発想を無謀と感じて、とまどうこともあるが、井深に従ってものづくりは開始される。
◆消費者に生きがいを
◎コンスーマーの生活がもので豊かになることが光栄の至り。「買う」ということが一つの目標、
生きがいになるようなものづくりをする。
◆現代の性能のいいテレビが生まれたのはトリニトロンのおかげだ。
◆大衆のきびしい価値判断が大衆商品を産む
◆ウォークマンが産まれるまで
『ある日井深は、芝浦工場を訪ね、ジーンズをはいた若い男性社員が何かを聴いているのを見た。
彼は、録音する部分がなく、聴く部分のメカだけがあるテープレコーダーをお尻のポケットに
入れて聴いていたのだ。「僕の欲しいのはこういうものだ」と井深は思った。
すぐ盛田を呼び、「盛田君、すごいものがあったよ。あそこの男の子たちが、自分たち用に
中途半端なものを作って聴いているが、あれは絶対ものになる、あの子たちに話を聞いてくれ」
と告げた。』
◆マーケットを作ることが技術革新の一つ
◎新しいものにチャレンジし、新しいものを創り、新しいマーケットを作り出していくことも
技術革新の一つ。マーケットはわれわれが積極的にこしらえていくのだ。
◆右脳的コンピュータの必要性
◎今作られているのは、言語・理論・計算をつかさどる左脳的コンピュータ。
これからは、芸術・信仰といったような、言葉で表せない分野の発想がある
右脳的コンピュータが必要な時代だ。
◆もっと小さいの
◎もっと小さいの作れないの?
軽くしよう!
ポータブルにならないのかな。
◆たわいのない夢を大切にするから革新が生まれる
◆トップの責任の取り方
「トップに立つ人は、泥をかぶる覚悟で仕事に立ち向かえ。
それでだめだったら潔くシャッポを脱いで謝る。
ただ責任ということで、
けじめをつけようとすることは間違いだ。」
◆経営者は能率主義に徹する
「本当の経営者は、来年、再来年に何かをやろうというときに、ターゲットを広げずに、
むしろ狭めていく。
そこに集中するために、無駄を省いていくのだ。」
◆5年後の商品は、60%が今の世の中にないものだ。
◆プロジェクトを組むときに大切なことは二つ。
〈キーマン〉を見つける。
そしてその人がやる気になるよう〈説得〉する。
それができれば、目的は半ば達成したようなもの。
◆大事なのは人である。人と人とのつながりを考え、働くことに喜びを感じられるような
環境を作ることだ。これには、社員の力が結集されなければならない。
◆違った角度から攻める
★ソニーの創業者です。私自身は、盛田昭夫氏の方が、記憶に残っておりました。
本田宗一郎さんと仲がよかったそうです。
井深氏は東芝の入社試験に落ちた経験があり、後年、こう語ったそうです。
「私が東芝に受かっていたら、今日のソニーはない」
本日は、この辺で。
ソニー・ヒューマンキャピタル編「完全図解戦略会計で利益を創る」日本経済新聞社です。
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目次
第1章 会社はどう評価されるか
第2章 戦略会計を学ぶ
第3章 B/SとP/Lから会社を評価する
第4章 キャッシュフロー会計
第5章 キャッシュフロー計算書で経営を分析する
第6章 EVAで企業価値を創造する
◆すべてのビジネスパーソンにとって、会計・財務は必須科目
◎会計・財務はビジネスの世界における「言葉」といえます。言葉を知らずして自分の意思を思い通りに表現したり、
伝達したり、説得したりすることはできません。ビジネスに携わる限り、会計・財務を避けて通ることは不可能です。
◆決算報告が「制度会計」と呼ばれる理由
◎「そこに集積された会計データ、会社の現状を伝える最も豊かな情報源であり・・・・・将来を見通すにも
不可欠の情報」(『財務会計』斉藤静樹著、有斐閣)
◆儲けはどこへ行った?
◎利益が出たからといって、余分な金を預金にして抱えておく会社はありません。利益分で必要な機械を購入したり、
次の投資にまわしたり、借入金の返済に充てたりして活用します。
◎それを知らないと「俺が苦労して儲けたお金はどこへ行ったのだ。儲けはいつ使わせてくれるのだ!
などと言って、経理を困らせることになります。
◆制度会計と戦略会計の違い
◎戦略のレーダー。「MG」で感覚を身につけられる。
◆損益分岐点を使える形にする
◎BEPは黒字・赤字の分かれ目
◎「走りながら使える武器」としてのBEP
◎自分の手で使いこなせて初めて、「戦略会計」に基づいて経営に参画したといえる
◆ます固定費をつかむ
◎経営とは、固定費回収作戦である
◎固定費をつかむことは経営上非常に大切
固定費=総費用-変動費
◆収益を分解する
◎限界利益は固定費回収のパワー
◆P戦略を考える
◎Pはなぜ下がるのか
◎研究開発で差をつける
◎売り方で差をつける
◆B/Sの下半分で見る安定性
◎固定資産を買う資金をどうまかなうか
◎安定した資金が望ましい
◆「たくさん作れば安くなる」は本当か
◎製造単価を下げるため、製造量を増やして一個あたりのコストダウンを図る場合がしばしばあります。
これは、はたして本当に経営のためになるのでしょうか?数字で厳密に調べてみると、それが誤りであることがわかってきます。
◆減価償却で固定資産が減る
◎価値の低下を資産価値の減少として計上
◎減価償却した金額はどこへ消える?
◆減価償却費は費用である
◆減価償却費は資金となる
◎借入金返済、設備の更新に使う
◆キャッシュフロー計算書とは
◎現金の出入りをジャンル別に並べてもの
◎本質的には「現金出納帳」の考え方に近い
◆運転資金は抑えられるか
◎営業キャッシュフローを改善させるポイント
◆DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法とは
◆IRR(内部収益率)とは何か
◎将来キャッシュフローと初期投資額がイコールになる割引率
◆財務キャッシュフロー戦略
◎自己資金経営を実現するために
◆これからの企業価値
◎フリーキャッシュフロー、EVA、MVA
執筆:松原直樹、梅本到「人事屋が書いた経理の本」(共著)
★いずれにせよ、一度マネジメントゲーム(MG)を経験してみたほうがよさそうです。
フォトリー、MG、受けたいセミナーの増えていきます。
有言実行、チャレンジします(笑)!
本日は、この辺で。