『わが安売り哲学 新装版』中内 功(著)
出版社: 千倉書房 (2007/10) ISBN-10: 4805108886
目次
めざすは消費者主権
メーカーへの挑戦状
これが流通革命だ
ダイエーはかく進む
人は現場で鍛える
競争こそすべて
◆バリュー主義
『 新しく開ける消費者社会を貫く原理を、バリュー主義と呼びたい。バリュー主義は、消費者が求める
バリュー(価値)を基礎にする。従来の、そして現在のほとんどの企業はコスト主義で染められている。
物の価格を決めるのに、コスト(費用)がいくらかかるから売価をいくらにするというのがコスト主義
であり、ここでは消費者は無視されている。バリュー主義では、その商品に消費者が求める価値を基準に
して売価が設定され、コストは無視される。
生産された商品は、流通過程を経て消費者の手中に渡ったときに初めて売れたという。ここに価値が
実現する。経済現象は基本的には、経済的な価値の生産、消費の循環現象であり、消費者の購買によって
価値の再生産循環が完結する。締めくくりとなる消費者による購買の質と量は、全面的に消費者自身の
価値判断による。その人が高い価値を認めれば多額の代価を進んで払うし、価値を認めなければ一顧だに
すまい。消費者の判断は、生産者の主観的な期待や思惑とは完全に独立した行動である。つまり、コストとは
無関係なのだ。その品を作るのに巨額の費用が投じられていたとしても、消費者が認めなければ価値はゼロである。
コストはほとんどかからなかった品でも、消費者がほしがる品なら高い価格となる。バリュー主義とはこういう
考え方である。』
◆松下幸之助氏に期待する
『 松下幸之助氏の思想に共鳴しているゆえに、私は松下氏に現在の流通部門の行く手をもう一度とくと見て
ほしいと思う。そのなかで、生産者の役割、流通業者の役割を明確にされることを期待する。
メーカーは良質の商品を生産し、ブランドで保証するのが役割である。しかし、いったん販売店の所有に帰した
商品の販売価格、販売方法は商品の所有者である販売業者が決定すべきである。商法に明記されているように、
販売業者は自己の計算で取引しているのだから。そして、消費者は自己の権利を十分に行使してよりよい
消費生活を営む。消費者─流通業者─生産者の三権分立がぜひとも必要である。』
◆流通革命は権力の交代
『 価格は、価値の絶対的、集中的な表現形態である。個別の企業がそれぞれの意志に基づいて行動する資本主義
社会にあっては、価格は全世界の中心にある。企業は市場の価格の動向によってのみ生産と販売への行動を
決め、結果としての利潤を追求していく。労働の価格としての賃金は家計を左右し、人は賃金を職業選択の
重要な参考にする。』
◆チーピーストアからの脱皮
『 私は、いままで「ダイエーストリップ劇場、百貨店歌舞伎座」論をとなえてきた。百貨店は商品よりも長年の間に
築いた名声やイメージを売る。ダイエーは商品そのものを売る。ダイエーは、若い女の子の裸を大量に陳列している
ようなもので、内部の設備や看板は二の次だ。中身のショーが肝心なのだ。ストリップ劇場がたとえ内部を
シャンデリアとじゅうたんで飾ったとしても、ショーが貧弱であれば客を集めることはできない。同様にダイエーは、
大量の商品の裸陳列によってファンを集めていく。だがストリップ劇場に俗悪なイメージがあるように、スーパーと
いうと、安かろう、悪かろうのイメージを消費者に与えてしまった。』
◆行動する経営者
『 経営者の資質としてはなにが必要か。
第一には、仕事への信念である。企業を取り巻く環境は刻一刻と変わっていく。明治百年、日本の企業は初めて
国際場裡に投げ出された。日本の企業をささえてきた低賃金は過去のものとなりつつある。日本の企業は初めて
構造変動の渦のなかに巻き込まれている。このとき、経営者は五年後、十年後のビジョンを描きながら、今日の
措置をしていく。いたずらな右顧左眄(うこさべん)は愚か者のすることである。わが所信の大胆な実行あるのみだ。
経営についての確固たる信念をもって先頭を走る経営者にこそ、万軍の兵は従ってくる。自ら信じること少なき者が、
他の人びとに福音を説くことは不可能である。飛びくる矢にたじろかず、木石のごとき非情な精神を持たねばならぬ。
価値の転換が激しいスピードでなされる現代において、常に「なにが正しいか」を的確につかみ、信念をもって
「正しいこと」を遂行していくことが要求される。正しいことさえやっていれば、企業は絶対につぶれないはずである。
経営者の信念は、社員一人一人の信念となり、困難があっても信念のもとに克服していくものである。』
『 最後に、行動力である。すべてはここに結集される。経営者は行為する人であり、行動を通じて思考する。知識、
すなわち将来役に立つであろうと思われることに対しての論理的な思考と、その情報の集積、一方では過去の仕事を
通じての経験法則の蓄積としての経験を行動に生かし、行動を通じて成果を造り出す──これが経営者である。
不退転の決意を心に秘めて、最も困難な仕事を受け持ち、陣頭にあって叱咤する経営者の姿こそ、最も美しい姿である。 信念も勇気も柔軟性も、行動のためにあるものではないだろうか。自分の行動のなかにこそ喜びを見出し、しかも
その成果におぼれることなく、再び新しい行動のなかに身を投じていく、それが経営者である。』
★まえがきで、キャッシュ・レジスターの響きは、この世の最高の音楽である、とうい名文句があります。
神田さんの本では、通帳への、記帳機で、記帳する際、「じっ、じっ、じっ」という音を聞くと、幸せを感じると、
書いていました。
こちらは、ATMですね。
どうして、僕がここに反応したかというと、僕の父が創業する前に働いていた会社が日本NCR。
NCRとは、ナショナル・キャッシュ・レジスターの略です。
レジ―の最王手の会社でした(笑。
インターネットの時代となると、 なかなか、体感しずらくなるのでしょうか。
なかなか、読み応えのある1冊です。
商売に関心のある方には、ぜひ、お勧めです。
本日は、この辺で。
『流通王・中内功とは何者だったのか』大塚 英樹(著)
出版社: 講談社 (2007/8/24) ISBN-10: 4062138603
目次
序 章 巨星墜つ
第一章 狂気
第二章 文化大革命
第三章 商人と商売人
第四章 好奇心といかがわしさ
第五章 事業家というもの
第六章 栄光と転落
終 章 「中内功」とは何者だったのか
◆寂しき葬儀
『 中内功という男は、日ごとに言うこと、やることが変わった。中内に言われたとおりのことをやっても、別の日には
「貴様、なにをやっているんだ!」と怒鳴られる。あるいは、新しいことを提案して「それはいいことだ」と誉められた
と思いきや、別の日には「そんなことをやっても意味があるのか」と叱責される。だから、中内と直に接点があった
たいていの人間は、それぞれに苦々しい思いを重ねている。
中内が求めていたのは、流通革命を志す自律的な人間だった。つまり、中内がやってほしいと思うことを、自らの
頭でシナリオを考えて、責任を持って行動する人間だった。そういう社員になってほしいと、彼は望んでいた。しかし、
中内はそんな素振りは微塵も見せないばかりか、もし、社員が自分の意図を無視して裁可を仰がずに独断でやろうもの
なら、二度と会おうとしなければ、会っても目線を合わせることはけっしてなかった。そのため社員たちは、中内を
怖れ、ただただ中内の表面的な発言を捉えては、それを忠実に実行に移すのみだった。
そんな部下を見て中内は、「なぜ俺の真意をわかってくれないのだ」と、腹立たしい思いにかられたことが、幾度と
なくあったに違いない。私は、中内がよく幹部社員を名指しで「彼もやっぱりサラリーマンやな」と言っていたのを
思い出す。しかし、社員を超イエスマンにしてしまったのは、誰あろう、中内自身にほかならない。中内自身の抱える
矛盾が、皮肉にもかえって己の理想とはまったく逆の人間を生み出す原因となっていた。中内の生涯は、常にそんな
ある種の二律背反性がつきまとっていた。』
◆人間・中内功
『 中内の好奇心は、あるときは旺盛な事業マインドに結びついた。中内が無類の読書家だったのも、そのためだった。
新しい情報に敏感で、大量の書物を斜め読みのようにして読み、そこから得た情報をいかに事業に結びつけるかを
絶えず考えていた。移動中の車中から目にする街の風景でさえ、事業のアイデアを喚起する情報源となった。そして、
思い込んだら一途に突き進む、強い意志の持ち主でもあった。』
『 筆まめで、海外に行くと知人や友人や社員によく葉書を書いて送った。私も何度かもらったことがある。
「ニューヨークの摩天楼から街を見ていると、アメリカ200年の歴史の重さがわかるような気がします」
「上海、北京、天津と駆け足でまわってきました。成長のスピードの速さには驚くばかりです。昨日は人民大会堂で
李鵬首相と会って流通の近代化について話してきました」といった発信を、絶えずしていた。』
◆なぜ今、中内功なのか
◆流通革命は敗れたか
『 彼がミッションを持って日本のチェーンストアの成長をリードし続け、現在の流通業界の基礎を確立したことは、
紛れもない事実である。江戸時代から「士農工商」と言われて低く見られてきた「商」の地位を、時代を利用し、
消費者を味方につけることによって向上させた。「流通」を通して、日本に世界有数の消費者社会を現出させた。
中央と地方の格差なき消費者社会の実現を果たし、地域構造、経済構造そのものを変化させてしまった。
それが、中内功のやったことなのである。』
◆金だけでは、おもろうない
『 三つのどれをやっとっても、金は儲かったと思うね。パチンコ王とか、ソープランド王とか、サラ金王になって
いただろう。しかし、僕はいちばん儲からんスーパーマーケットを選んだ。心がまったく動かなかったと言えば
ウソになるが、でも、それではあまりにロマンがないやろ。
それと、死んだ戦友に対して、なにか後ろめたさがあってね』
◆創業二十周年の涙
『「僕だって人間だ。怒るときもあれば、泣くときだってある。いつも自然体でいたいと思う。部下の前だからと言って、
やせ我慢して涙をこらえるなんてことはしない。まあ、感情のおもむくままにしているということだ」
中内功は感情の起伏が激しい男だと言われた。怒るときは怒鳴り散らし、ものを投げつけたり、蹴飛ばしたりする。
うれしいときは、にこやかな表情になり、感極まれば涙する。悔し涙を流すときさえあった。』
『 昔日の思い出を追ううちに、中内は、胸に熱いものが込み上げてくるのを覚えた。
司会者がすべての表彰者を紹介し終えた。
「では、ただいまから中内社長のあいさつを行います」
中内の顔は紅潮し、マイクを口に近づける手が、心なしか震えているように見えた。
「おかげ様で、ダイエーも20周年を迎えることができました。これも、みなさんの今日までのご努力のたまものと、
厚くお礼を申し上げたいと思います。20年勤続、本当にご苦労様でした。20年もの間、雨の日も、風の日も、
みなさん方にダイエーのために常々協力してもらったのです。みなさん方の力がなければ、とうてい今日のダイエーの
発展はなかっただろうと思います。みなさん方のがんばりがあったからこそ、今日のダイエーと私があるわけで・・・」
中内はしだいにうつむき加減になり、話もとぎれとぎれになっていった。
「それなのに・・・なんで僕がこんな高いところに立って、みなさん方が下にいなければならないのか・・・と思うと、
本当に申し訳なくて・・申し訳なくて・・・」
そして、中内は絶句した。うつみた目から、大粒の涙がこぼれ落ちていた。中内は必死に言葉をつなごうとしたが、
声にならなかった。しんとした会場に、「うっ、うっ」という低い嗚咽だけが響き渡った。
中内は壇上で、かなり長いこと、泣いていた。ほとんどの出席者にとって、そんな中内の姿を見るのは初めてだった。
そこここから忍び泣きの声が漏れ始め、それがしだいに会場全体に広がっていった。
「これ以上、話ができません。申し訳ありません」
やや平静を取り戻した中内は、そう言って、司会者に手を振った。
中内は一人ずつに賞状を渡し、「御苦労様でした」とねぎらいの言葉をかけ、握手を交わし抱き合った。その間も、
中内の両の瞳は濡れたままだった。』
★栄枯盛衰を、まさしく、体現した人です。
ただ、
金儲けでなく、
自分の使命を全うした、そういった印象を、この本を読んで持ちました。
世の中の流れが、勝てば官軍、
お金儲けの上手い人が、「勝ち組」という風潮から、変わりつつある、今。
彼が成し遂げたことを、再評価される、時期が来るように思いました。
本日は、この辺で。
『価格破壊 (文庫) 』城山 三郎(著)
出版社: 角川書店 (1975/06) ISBN-10: 4041310067
目次
第一章 大晦日
第二章 くさる
第三章 土壇場
第四章 強損強栄
第五章 犠牲者
第六章 と 畜
第七章 スタミナ源太
第八章 賭けの行方
第九章 消し屋
第十章 謀 反
第十一章 二つの事件
第十二章 汚い取引
第十三章 感傷旅行
第十四章 分断作戦
第十五章 摘 発
第十六章 薄 明
第十七章 一進一退
第十八章 展 開
『 郡山社長は「ビタネール」の棚に目を向けて言った。
「評判を聞いて見に来たのだが、なるほど手ひどく値を壊していますな」
「値を壊す?」
「そうです。うちの定価は問屋・薬局の皆さんにも適正な利潤を保証し、十分に良心的な製造販売ができる価格です。
その価格を破るのは、価値秩序さのものを壊そうということで、世の中を混乱させます」
矢口は立ち直った。相手が誰であろうと、その種の問題なら持論をくり返すほかはない。
「わたしは壊してなどいません。わたしが価格を設定しているのです。商人が自分の商品に自分で売値をつけている
までです」
「いやいや」老社長は子どもでもあやすように手を泳がせ、「あなたは勘ちがいしている。グランドの薬はグランドの
薬としての価値があるのです。百八十円のビタネールは百八十円の価値があるようにわが社が開発し、製造し、宣伝費を
注ぎこんだものです。あくまでわが社の商品であり、価格もわが社できめるべきものなのです。再販価格維持商品として
法的にもそれが保証されている。あなたひとりが勝手にそれを破壊しているのです」
「仮に破壊したとしても、わたしの創造的破壊ですよ」』
『「他にも安売り屋が現れたのです。名古屋と姫路、それに川崎あたりにも出てきました。あちらにもこちらにも反乱が
起こって、もうメーカーも手がまわりません。問屋をチェックしきれなくなりました。いよいよ乱売合戦です。
日本のクスリ屋はじまって以来のおもしろい世の中になりますよ」
矢口も奈津子も茫然と聞いていた。聞きながら、まだ信じられなかった。宇宙に綻びでもできた感じであった。』
『 一通り仕入れが終わったとき、早船が言った。
「これから永くお取引をねがわなくちゃならんので、ひとつお近づきのしるしに一杯いかがです」
「いや、わたしは飲めぬ方で」
「でも、どうせ夕食どきだし」
いかにも酒好きらしく、目を細め、厚い唇を突き出すように言う。
「御馳走してくださるというんですか」
矢口は念を押した。
「そうなんですよ」
早船はにこにこしてうなずく。
「どんなところで」
「・・・・いつも使う九段の料亭ででも」
「妙なことを訊くようですが、そこらですと、一人いくらぐらいかかりますか」
「それはいろいろだが、まあ五千円から一万円」
早船は苦笑しながら言うと、矢口はそれをひきとって、
「すると、二人で二万円。それでは御馳走してもらったことにして、二万円だけ値引きしてください」
早船は口をあけ、矢口の顔を見直した。おどろきと同時に、なんという味気ないことをという蔑みが、その眼に光った。
だが、矢口はまじめな顔でくり返した。
「今後も御馳走分は値引きしてください。わたしの代わりに若い者が仕入れに来るようになっても、紅茶ひとつ
出さなくて結構、いや、出さないでください。その代わり、その分だけ必ず値引きをおねがいします」
「しかし、矢口さん、せめて最初だけは・・・」
矢口は首を振り続けた。
「強損強栄でいきましょう。さあベスト・シニアをいくらにしてくれますか」』
『 できるだけ安く売るためには、できるだけ安く仕入れなければならない。矢口はその点でも、徹底して行動した。
仕入値段をぎりぎりまでたたく。大量仕入れのきく商品は、トラック一車なり貨車一両分なり輸送コストの最も
安くつく単位で買うことにし、その輸送コストの節約分をまた値引かせる。接待や招待はいっさい断わり、その
申し出があると、すかさずそれに見合う金額を値引かせた。
問屋の運んできた商品のケースは、その場で開封させた。店への報奨用に景品や金券・点数券がはいっている場合が
ある。それを先に全部取り出し、相応の金額を計算させて、これも事前に仕入れ値から差し引かせる。化粧品箱や
セロファン袋などで使いそうもないものは、それも問屋に引き取らせて値引き。陳列用のラベルも、一枚あれば
いいからと、残りの何枚かは引き取らせて、わずかな金額だが、その分も値引。』
『「きみが薬局主だったら、これからどうするかね」
矢口は試すように訊いてみた。
「わたし?クスリも売るかもしれませんけど、父ような薬局主にはなりませんわ。むしろ、徹底的にお金儲けをして
みたいと思います。社長さんに教わったように、刺身を売るよりムニエルを売るようにします。巧妙に徹底して
儲けるようにしますわ」
映子は美しい顔を上気させた。多少背のびして言っている感じであったが、それにしても、その答えは矢口には
少々意外であった。自分の意図が正確に伝わっていない気がした。
矢口は、「おいおい」と言ってから、つぶやいた。「クスリがまちがった効き方をしたようだな」
「どういうことですの」
「ぼくは回転の必要を言ったんだ。ムニエルがいいというのは、できるだけ多くの品物を回転させたいためなんだ」
「でも、結局は儲けろということに」
「儲けも必要だが、ただ儲けるだけのためなら、もっと他のやり方もある」そこまで言って、矢口は失笑した。』
『青春は鍛えるためのものだ』
★夏休み向けに、傑作長編経済小説をご紹介します。
350ページを超えますが、あっという間に読めます。
1975年が初版ですから、
発表されたころが、私が生まれた年ぐらいかもしれません。
もちろん、これのモデルとなったダイエーの中内功さんはじめ、当時の方々の全盛時代は終わり、
流通革命は、どんどん姿を変えています。
ただ、
その最初の志や、社会的使命感は今でも、逆に今だからこそ、よく分かります。
そして、世の中を変えていくために、いろいろと困難にぶち当たっていく姿は、
これからの自分の行く末に、役立つと思います。
本日は、この辺で。
『流通革命の真実―日本流通業のルーツがここにある! 』渥美 俊一 (著)
出版社: ダイヤモンド社 (2007/3/9) ISBN-10: 4478090033
目次
第一章 セルフサービスの誕生
第二章 武器としての価格破壊
第三章 ゼロからの出発
第四章 日本型スーパーストアの功罪
第五章 フォーマットの理想郷
第六章 合併のダイナミズム
第七章 出店政策の分水嶺
第八章 ディスカウントストア幻想
第九章 ディスカウントストア再挑戦
第十章 バラエティストアの復権
第十一章 フードサービス業の揺籃
第十三章 商品がすべて
第十四章 チェーンストア商品開発の根本原理
第十五章 チェーンストアの時代
◆セルフサービス=ノーサービスの誤解
『 当時、セルフサービスのノウハウに関して二つの問題がありました。セルフサービスは対面売場、食品なら
量り売りを否定します。ということは、一定量のリテイルパックを、あらかじめつくらなければなりません。
そのためには、どのような量目でパックして売るのかを決める必要があります。
ところが、その量目の決め方もわからなかったのです。それが第一の問題でした。
しかしこの問題は、私の得意な分野でした。読売新聞社の横浜支局にいる間に、生産管理やIE(インダストリアル・
エンジニアリング)的な手法を身につけていたからです。・・
・・私はその診断手法や、事例を聞くのが面白くて、しばしば商工指導所に行き、相談者の横で取材していました。
その話をひとひねりすると、いい解説記事ができるからです。工場診断にもついて行きました。横浜には、さまざまな
加工工場があり、生産管理の勉強ができました。』
◆社会変革活動としての商業ルネッサンス
『「総理大臣や通産大臣をやるよりも、三井物産や伊藤忠商事や日立や東京電力の社長をやるよりも、商業人として
あるべき活動をするほうがより大事だし、社会に対する影響力があるんだ」という主張を展開し始めたのです。』
◆IE手法を商業の世界に持ち込む
『 チェーンストアやショッピングセンターやスーパーマーケットをどう実現するかの具体的なノウハウは、これから
得ていかねばならぬ知識でした。しかし、とりあえず経営革新のための提案は必要でした。そのときに威力を発揮した
のが、私の「IE論」でした。
たとえば、「店員は何のためにいるのか」と質問すると、ほとんどの経営者は、「接客のためだ」と答えます。
ところが、私がメンバー企業の現場に行って、店員が接客を何分やっているのか動作時間の計測をしてみたことろ、
ほとんど接客をしていなかったのです。
経営者は、「働いている八~九時間のうち、五時間は接客しているだろう」と思っているわけですが、実際に
計測してみると、接客に一日当たり三十分以上使っている店員は一人もいません。経営者の思い込みと現実の実態とは
大きく違っていたわけです。』
◆部門別管理表が作られなくなった真相
『 私は40年前、日本NCRの講師の先生から、「米国のマイケル・カレンが部門別管理手法を発明した」と教わりました。
マイケル・カレンは1930年に、ニューヨーク州ロングアイランドのジャマイカでスーパーマーケットの「キング・カレン」
をオープンし、粗利ミックスなど斬新なマネジメント手法を考案したことで知られる人物です。
この部門別管理表については、IBMとの秘話があります。』
◆ハードが進化しても使う準備ができていない
◆売ってはいけないものを売らないことが一番大事
◆「流通革命」に燦然と輝くダイエー中内氏の業績
◆サイドディッシュで稼ぐマクドナルドの営業政策
◆一番大切なのは原価を下げることではなく、トレードオフの技術(p-261
★骨太の1冊です。
小売・流通にかかわる方ならば、1800円は非常にお得です。
これ、1冊で日本の流通革命の歴史がわかります。
ペガサスクラブの秘密が明らかになっています。
ただ、
恐るべしは「欧米」です。
社員一人当たりの売り場面積や、アメリカのチェーンストアのバイヤーとは腕がまるで違うとのことでした。
素人目には、これだけ、改善が進んでいるようにみえますが、
それでも、なおかつ、改善の余地があるようです。
本日は、この辺で。