顧客視点の成長シナリオ―モノづくりの原点

書評

 

『顧客視点の成長シナリオ―モノづくりの原点』江口 一海/矢野 英二/木島 研二/郷 好文(著)
出版社: ファーストプレス (2007/8/4) ISBN-10: 4903241580

目次

はじめに—-「顧客視点の成長シナリオ」への挑戦

序章 成長シナリオへの三つの活動コンセプト
1 成長企業に学ぶ成長シナリオ
2 第二の創業を実現する三つの活動コンセプト
3 1000m上空の視点から事業と環境を鳥瞰する

第1部 事例研究編

第1章 「コエンザイムQ10サプリメント」の成功事例に学ぶ
はじめに 経営成長の原点
1 現状分析
2 くやしくないのか!
3 「ならでは」の独自のポジションづくり
4 市場トレンド分析
5 商品コンセプトの刷新
6 売り方とSCMプロセス
7 三位一体サイクル
8 社員全員の意識覚醒と努力

第2章 「新幹線の高速化を支えたインバータ装置開発」の事例に学ぶ
はじめに 成長シナリオを実現する技術革新と商品開発
1 モノづくりをめぐる三つの視点と顧客ニーズ
2 社会インフラ製品に求められるもの
3 新技術開発における相反する課題
4 商品を変えるプロジェクトの発足
5 新商品が持つ、相反する課題と解決のポイント
6 顧客ニーズを実現する社内外連携
7 連携によるモノづくりのポイント
8 ようやく完成した1号機、そして量産に

第2部 実践編

第3章 顧客視点から考える事業モデル
1 いま何が起きているのか
2 この20年で、つくり手から買い手主義へ
3 企業のライフサイクルと第二の創業
4 顧客価値に基づく事業モデルの刷新
5 経営視点の価値の再統合
6 成長モデルの決め手は、顧客価値
7 顧客の視点で事業全体を評価
8 事業プロセスを見直す
9 顧客価値を設定する
10 成長し、勝てる事業モデル構築の全体関連
11 製造業の成長力を高める事業モデル

第4章 成長シナリオの構築
1 成長シナリオ構築の全体ステップ
2 ポジショニングとは「気づき」である
3 どこに向かい、何を強化すべきか
4 目的とやることの共有化
5 活動コンセプトづくり
6 成長シナリオ・ライティング
7 ステージアップ・プラン/実行計画の策定

参考資料 成長シナリオ・ベンチマーキング

おわりに—-多くの企業戦士よ、出でよ
参考文献

◆第二の創業を実現する三つの活動コンセプト

『 売り方とは「顧客価値の本質を実現する、顧客との接点を再編する活動」であり、顧客との接点をいかに
規定するか根幹になる活動である。商品とは「顧客価値の本質にマッチする商品とサービスを提供する活動」
であり、顧客に提供する直接的な価値を具体化するものである。SCMプロセスとは「売り方と商品が実現する
価値を顧客網上に構築する活動」であり、商品のモノづくり工程、出荷から顧客の手に渡るまでの物流で
含めた事業体制や組織機能を指す。

◆100m上空の視点から事業と環境を鳥瞰する

『 日本の企業の多くが、すでに30年あるいは40年以上の歴史を引きずっている。近年に生まれ、生き延びつつ
ある一部のベンチャー企業を除けば、日本企業の経営の場にあるのは、多くの場合、強い志と創業魂に
揺り動かされた創業者が、過去につくりあげた事業モデルに依拠しながら、その後の長い時代を知恵と工夫と
改善を繰り返しながら今日に至っている姿である。
生き延びるために実行してこられたその努力には敬意を表したい。だが過去に事業モデルをつくる動機となった、
30年前あるいは40年前の顧客・市場環境と、今日の顧客・市場ではまったく様変わりしているはずである。
この点に目をつぶり、旧弊した事業モデルの効率化に汲々とする企業や事業は、すでに成長できないか、
早晩成長から見放されてしまう。』

◆①フルラインの品揃え

『 2000年当時、医薬品業界では、フルラインで医薬品から医薬部外品まで発売されていた。風邪薬から水虫薬、
ミニドリンク剤まであった。そのうちの一つ、ドリンク剤だけでも、大手企業が莫大な広告宣伝費を投入する、
数多くのブランドがひしめく激戦区である。風邪薬も同じである。どれか一つの著名ブランドをとっても、
莫大な広告販促費を投じてシェアを維持し拡張する大事業である。医家向けの医薬品事業でも競争が熾烈で
あることに変わりはない。その市場で、20数億円の事業規模で、フルラインの品揃え、80品目に及ぶ商品郡が
あれば利益が出にくい。戦線の広げすぎが第一の赤字の要因だと考えた。
ならば、商品数を絞り込めばいいではないか、とだれしもそう思うだろう。
だが商品を絞り込むというのは、口にはできるが、現実的にはなかなか実行しにくい。なぜなら、これまで
販売を継続している商品は、一定規模の売上高をもっている。個々の売上高の数字があるがゆえに、その数字を
なくすことは自ら手をつけにくい。まして開発者や日々それを売っている営業担当者にしてみれば、自分たちが
生み育ててきた商品であり、来年度は何らかの手を打てば(たとえば成分を改良する、販促費を投じる)もっと
売れると考えるのである。
経営視点から冷静に事業を見渡して、まんべんなく(一つひとつが小さな売上高の商品に)事業資源が割り当て
られての赤字なら、もちろん絞り込みこそ必要である。それは論を待たない。だが絞り込んで、その売上減少分を
どの商品でいくらカバーするか。それに答えることが経営構造、ひいては現場一人ひとりへの本質的な投げかけで
ある。
その本質的な投げかけは、「なぜ資生堂というブランドで水虫薬なのか。なぜ風邪薬なのか」という、
まっさらな視点から始められた。』

◆社員の意識

『 赤字要因の三点目、社員の意識要因について。赤字事業の改革プロジェクトに着任する新任のトップとして
腐心したのは、先にさまざまな努力をしつくしてきたと感じる社員たちとの信頼関係の樹立である。すでに
この手もやった。あの手もつくしたと感じている社員に対して、経営を良くするために一緒に考えるために
来たという姿勢をどう感じてもらえるかである。
ここでプロジェクトの成否が分かれることも多い。それまで何が起きていたかを知ることは必要であるが、
それらを「考えたが実行しなかっとこと」「考えなかったこと」「実行したがうまくいかなかったこと」に
分けることから始めた。同時に、「諦めるな、たいへんな道のりだがやれるはずだ」と訴え続けて、
信じ合って進んでいかなくてはならない。社員一人ひとりを燃やすことはテクニックではなく、熱意対熱意、
信頼対信頼の作業なのである。』

◆くやしくないのか!

『「負け組みだぞ、くやしくないのか!これだけ赤字を出しているんだから、われわれの事業は賊軍なんだ」
赴任後、私は社員を集めた席でこう話した。きつい口調だったかもしれないが、事業をするとは自分の
ためにやることだ、だれのためにやることではない。親会社は大企業であってもこの事業はまだ中小企業に
すぎない。中小企業なら全員が多能工化して切磋琢磨しなくてはならない、と。』

◆事業の存在意義

『 このように精神面から社員を鼓舞する一方で、この「事業の存在意義」を分析した。世の中全体での事業の
位置づけ、企業グループ全体での商品ラインの位置づけ、そして事業機能上の位置づけの三点である。

①世の中全体での事業の位置づけ
②企業グループ全体での商品ラインの位置づけ
③事業機能上の位置づけ』

★4人のかたの共著です。
元資生堂執行役員、新幹線制御装置の開発に携わった方など、そうそうたる方々による、骨太の一冊です。

とりわけ、
資生堂の薬品部門が万年の赤字だったこと、
コエンザイムQ10で大躍進した事例は、中小企業経営でも、参考になると思われます。

積ん読、ならぬ、再読したい、1冊です。

本日は、この辺で。