『軍事とロジスティクス 』江畑 謙介

書評

『軍事とロジスティクス 』江畑 謙介(著)
出版社: 日経BP社 (2008/3/19) ISBN-10: 4822246469

目次

 はじめに

 第1章 イラク戦争とロジスティクス

 第2章 アフガニスタンの戦いとロジスティクス

 第3章 軍事ロジスティクスの民間委託

 第4章 米軍海外展開戦略とロジスティクス

 第5章 軍事輸送システム

 第6章 これからの軍事ロジスティクス

 おわりに

◆戦いにおいて、第一にして最も重要なこと

 『「ロジスティクス」をオックスフォード辞典で調べると、「多くの人間と装備(装置)が
  関与する場合に、複雑な作戦(計画)を成功させるために必要とされる実際的な機構(組織)」
  (筆者注:カッコの中は、軍事に限らない一般的な日本語を当てはめた場合の訳)とされ、
  「軍」や「後方」にとらわれないかなり広範囲な(茫漠とした)概念である。』

 『 極端な話、人間は鉄砲の弾がなくても(弓矢や竹槍などで)戦えるが、水と食料がなければ
  戦えない。だから何をするにも、まず考えねばならないのはロジスティクスである。ギリシア
  の哲学者ソクラテスは、「戦いにおける指揮官の能力を示すものとして戦術が占める割合は
  僅かなものであり、第一にして最も重要な能力は部下の兵士たちに軍装備をそろえ、糧食を
  与え続けられる点にある」としている(クセノポンの防備録より)。ソクラテスは歩兵として
  二度の戦いに参加したことがあるから、これは経験に裏付けられた箴言である。』

◆情報ネットワークと無線タグの利用

 『 湾岸戦争当時、ペルシャ湾岸地域に送られた四万個のコンテナは、中に何が入っているのか
  わからないため、現地で一度開封し、中を確認し、また封印して所要の目的地に送り出すという
  煩雑な作業が繰り返された。十二年後のイラク戦争では、各コンテナには内容物、発送地、
  目的地などの情報を発信する電子タグが付けられ、外部から内容物や目的地をすぐに知ることが
  できるようになった。・・・』

◆センス・アンド・レスポンド補給と環境への配慮

 『 環境問題は現在の、そして今後の軍事のあらゆる面で重要な基本要素となる。単に二酸化炭素
  放出量やゴミの削減というだけではなく、必要とされる補給物資の量を削減するという目的も
  ある。イラクにおける補給物資の65%は飲料水と燃料である。現地で清潔な飲料水が確保
  (製造)でき、太陽発電や風力発電などの再生エネルギーの使用が普及すれば、補給輸送に
  必要な燃料は大幅に削減できる。こうした新しい技術開発によって、軍事ロジスティクスは
  さらに大きな変化を見せるだろう。』

◆「成功」とされたイラク戦争のロジスティクス

 『 もはや「悪夢の神話」となっているが、湾岸戦争時に中東に送られた四万個のコンテナの
  半分は、その内容物と行き先が分からなかったため、一度開封して中身を調べ、再び封印して
  それを待っている部隊に送り出さなければならなかった。イラク戦争では、そのような煩雑で
  重複した作業をする必要はなかった。コンテナに装着された無線タグが、中身と送り主、
  受取先の情報を知らせてくれたのである。
   前線部隊の補給担当者はJCALSやJEDMICSといったコンピュータ通信補給システムを駆使して、
  ディスプレイのアイコンをクリックするだけで必要な補給品の発注ができ、それがどこに
  あって、いつ発送され、今どこを運ばれているから、いつ頃到着するかを瞬時に知ることが
  できた。そのため、自分が発注した補給品要求伝票が本当に発送元に到着したのか、到着した
  としても確実に発送されるのか、という不安を抱いた補給担当者が、同じ補給品の要求伝票を
  何枚も出すという、従来は頻発していた現象がなくなった。
   ここから、無駄な、あるいは余分な補給品が調達され、現地に送られることもなくなった。
  それは単に調達の無駄がなくなったというだけではなく、結果的に余分な補給品を運ぶという
  貴重な輸送手段の浪費も防げたということである。湾岸戦争では補給品の重複要求のために
  100万トンの余分な補給品が調達・発送され、それによって12億ドルの経費と100日分
  に相当する輸送時間がかかった。湾岸戦争が終わった時点では、コンテナ8000個以上が
  未開封状態であり、空輸用貨物パレット25万枚が、何が載っているか分からないまま放置
  されていた。しかし、イラク戦争では、そのような愚行が繰り返されることはなかった。』

◆冷戦終了後に急増したアウトソーシング

 『 一方で、冷戦後の軍の削減と合理化により、「非戦闘行動」以外の分野で民間に委託する
  (民間業者と業務を契約する)度合が増えている。これは、冷戦に伴って軍人や国防省の
  文官(政府職員)の数を大きく削減する国が多く、その分、民間企業への依存度が増えた
  点と、軍人や政府職員よりも民間企業に任せたほうが安く済む場合が多く、経費削減のた
  めにも民間企業委託、いわゆる「アウトソーシング」の割合を増加させる必要が生じたため
  である。また技術の高度化により、軍では使いこなせなかったり整備ができなかったりする
  装備が増え、軍の作戦能力を維持するためには民間会社の支援が不可欠という状況も増加
  してきている。』

★非常に、毛色の変わった本です。
 たまに、戦略の勉強のために、戦史を読みます。

 ロジスティクスが大事であるというのは、
 いろいろな本で、知っていました。

 しかし、
 これほど、までに、革新が進んでいるとは、知りませんでした。
 何か、自分の仕事に応用できないかと、
 ワクワクしがら、夢中で読みました。

本日は、この辺で。