『捨てられるホワイトカラー―格差社会アメリカで仕事を探すということ』

書評

バーバラ・エーレンライク(著)
出版社: 東洋経済新報社 (2007/09) ISBN-10: 4492260854

目次

 第1章  就職活動のためのコーチを探す
 第2章  就職ネットワークの世界に踏み出す
 第3章  新兵訓練を生き延びる
 第4章  変身──外見を向上させるためのレッスン
 第5章  神様とネットワーキング──教会主催の就職セミナー
 第6章  もっと上を目指して
 第7章  ついに「合格」となる
 第8章  中流から下流へ

 『 計画はしごく単純だ。仕事を見つけること。健康保険に入れて、5万ドルほどの年収が得られて、安定した
  中流の生活ができるような、最低限のホワイトカラーの職場と言える「いい」仕事を見つけること。そんな
  仕事につくことができれば、企業の中堅どころの世界をじかに垣間見れるというめったにないチャンスに
  恵まれる。また就職活動をするということになれば、当然、ホワイトカラー企業労働者として最も過酷な
  状況に置かれてしまった人々、つまり失業者たちのなかに、自分もその一員として飛び込むことになるわけだ。』

 『 うれしいことに、熱心に手を差し伸べてくれようとする人たちが、およそ一万人もいた。この「キャリアコーチ」
  なる人物たちは、ウェブサイトによれば、職業に対して抱くほんとうの「情熱」を見つけ出す助けとなり、
  新しい履歴書の書き方を指導し、就職活動の一歩一歩を支えてくれるのだという。そういうコーチが三年ごとに倍増
  してきており、ホワイトカラー失業とおそらくは必然的に呼応して、90年代半ばから成長を続けている「転職産業」
  の中核をなしている。ブルーカラー層と違って、ホワイトカラー失業者には職探しに投資するある程度の資産が
  あると考えられている。おまけに、たいていは孤独で意気消沈している。つまり、繁栄と自信回復を約束するサービス
  にとってはまたとない市場となる。就職支援コーチには、キャリアアカデミーの15週間コースのようなプログラムで
  正式に養成された人もいれば、まったくの自己流でやる人もいる。コーチを名乗るのに何の資格もいらないし、規制
  する機関もいっさいないから、いいコーチに出会えるかどうかはまったくの運次第ということになる。』

 『「まずは、歳ね」
  「じゃ、それを何の問題にもならない年齢にしてしまえばいいわけでしょ。あなたはいくつになりたいの?」
   今の年齢に不満はないと言ったが、キムバリーからすればとうていそうは思えないのだろう。キムバリーは
  「生物学的年齢」と「歴年齢」の違いを説明しだした。私がどんなに今の自分で満足だからもういいと言っても、
  耳を貸そうとしなかった。「気分は37歳くらいだと思わない?」
   実のところ、37歳のころより今のほうが気分はずっといいのだが、しかたがない、37歳が私の「生物学的年齢」
  だというキムバリーの思い込みに付き合うことにした。
  「ということは、今あなたは37歳なのよ!」キムバリーは高らかに宣言した。
  「でも、履歴書を見れば歳はわかってしまうわ。大学の卒業年次が書いてあるもの」
  「履歴書に卒業の日付は絶対に書かないこと。若いころの仕事も全部削除して。10年、そうね最高15年までしか
  遡れないようにする」
   私は息を呑んだ。脚を膝から切断しろと言われたようなものだ。私はバーバラ・アレキサンダーのために悲しんだ。
  今までせいいっぱい飾りたてて立派に膨らませてきた体を、今度は小さく縮めろというのか。だが、そうするほかは
  ないらしい。1989年以前の記述は、すべて私の履歴書から削除しなければならない。』

 『 ネットワーキングが「まやかし」のように感じられるのは、そこでは、自然であるべき人付き合いが、秘めた
  目的のためにゆがんでしまうからだ。ふつうなら、知らない人に会うときは、相手はほんとうにただの知らない人で
  終わるかもしれないと思いながら、いつのまにかそれぞれが持つ複雑な魅力に好奇心をかきたてられていく。
  ところが、ネットワーキングは、売春と同じで、心惹かれている暇などない。いつでも、いわば話している相手の
  肩越しに、この対話からいったいどんな具体的な利益が引き出せるだろう、情報か、それとも貴重なコネかと、
  そちらのほうにばかり目が行くのだ。有効かどうかがすべての価値基準となるこういう考え方は、たとえば「企業
  変革によるホワイトカラー被害者」というような、グループとしての自己認識が生まれる可能性を潰してしまう。
  部屋はどんなに人でいっぱいでも、ネットワーキングしようとする人は、自分の個人的欲求を満たすことに汲々
  として、一人歩き回るだけなのだ。
   こんなことをぶつぶつ言ってみても、この状況では、ただの言い訳にすぎない。自信のなさからプライドか、
  とにかく何が私をしり込みさせるにせよ、それを克服しなければならないのだし、私が目的を遂げるにはさらなる
  助けが必要なことはあきらかだった。』

★体当たり取材記、というか、ドキュメンタリーと言うのでしょうか。
 「ニッケル・アンド・ダイムド」では、低賃金の単純労働者として、働いた。全国チェーンのレストランで、
 ウエイトレスをし、清掃婦になり、ウォルマートの店員として働いた。

 まぁ、今回のホワイトカラー版は、成功といえるかどうか、微妙な結末ですが、
 日本とだいぶ違う、就職事情や、あるいは、日本も変化していて、私自身が知らないだけかもしれませんが、
 失業者をビジネスとする人や、それを食い物、利用しようとする団体など、
 ずいぶん、知らない事実がぼろぼろ出てきました。

 正直、どんな人の参考になるかは不明です。
 日本では、馴染みない、「キャリアコーチ」を目指す方へ。

本日は、この辺で。