2代目が親子間で事業承継する際に、注意する点がいくつかあります。

これは、M&Aで知らない人から会社を買おうとするときにも同じことが言えます。

M&Aの仲介会社がしっかりしたところの場合は、予め買い手企業の財務状況をチェックしていますから、その心配はないと思います。

 

いくつかある注意点の中で、まずは、退職金の積み立て不足です。

ついでに、中小企業での退職金について、深堀します。

 

1、退職金の積み立て不足問題とは

2、退職金の積み立て不足へ3つの解決策

3、自分がM&Aで売る場合、株式売却額だけでなく、退職金をもらう方法もある

 

僕は、15年くらい前に、親子間で事業継承しました。

その際に、3人兄弟の末っ子なんですが、姉二人から株式を一部購入したので、

M&Aで、会社を買ったともいえます。

ではさっそく、本題に入ります。

 

 1、中小企業の退職金の積み立て不足問題とは?

具体的には何かっていうと退職金です。上場企業では、年金制度も含まれますがここでは省略します。

上場企業の場合は、「退職給付会計」というルールがあります。

簡単に言うと、会社にとって、退職金は社員に対する将来の負債です。

社員の平均勤続年数が増えるほど、将来の退職金が累積的に増えていきます。

そこで、こうした未来の費用を、会計上、

現在の決算書(B/SとP/L)に計上しなければならないというのが、

「退職給付会計」のルールです。

中小企業も、同じなのですが、

分かっちゃいるけどやっていないというケースがけっこうあります。

 

極端な話、明日、社員全員から辞表がでてきても、

全ての退職金が払えるだけの積み立てが必要なわけです。

 

最初に言った通り、M&Aとかの場合は、資産を査定するデューデリジェンスがあるので、

そういうのもきちんと調べます。

 

ただ、僕のような、親子間の事業継承の場合は、売り手の親の方も、

買い手の子供の方も、そういう事を知らないっていうケースが多いです。

 

僕の場合は、創業である父親が知ってたかどうかっていうのは定かじゃないんですけど、

継いだ後にでてきましたね。

経理責任者から、実は、こういうものがありましてと、

Excelでちゃんと一覧表になってたんですけど、

退職金の将来払う可能性のある一覧表っていうものですね。

当時は見てびっくり仰天しました。

「早く、言ってよー」ですね。

これ知ってたら、継いでないよ、という感じの、結構な額でしたね。

 

創業からのいけいけの会社は特に、

社員の勤続年数が当初は、短かったので、全然問題なかったわけです。

しかも、特にバブル期のIT会社っていうのは、景気がよかったので給料がすごく高かったです。

そこをベースで、計算された退職金はかなり高額でした。

 

2、中小企業の退職金積立不足への解決策は3点

  • 退職金を分割払いさせてもらう
  • 生命保険を使って退職金を積み立てる
  • 退職金規定を改定して新たな退職金積立を不要にする

 

退職金を分割払いさせてもらう

困ってところで、払うべきものは払わないといけないので、3つの対策を打ちました。

直近で、高額な退職金を支払う必要があって、辞める社員には、

正直に、会社の財務状況を説明して、退職金を分割払いとさせてもらいました。

とはいっても、そんなに長期のローンにはできないので、

辞めた後も、給与相当額を支払い、それで10ヶ月分の分割などとしました。

これは、会社にとっては、それほど無理なく支払えるので助かりました。

 

生命保険を使って退職金を積み立てる

ある程度、それで高額の退職金が一巡した後は、

残った社員の中で高額な人の分を、生命保険を使って事前に積み立てました。

別に、退職金でなくても、よかったのですが、

銀行口座以外に積み立てるのと、決算書上も現預金以外の科目になります。

ですから、

退職金の支払い以外の目的外に使いにくいと思ったからです。

 

法人保険の検討

退職金規定を改定して新たな退職金積立を不要にする

3番目は、根本的な解決策です。

退職金の規定を大幅に改定して、ほぼ新しい退職金が発生しない退職金制度に切り替えました。

これは、従業員に対して、不利益変更の同意というプロセスが必要となります。

労働基準法で定められたものなので、社労士の先生にはいってもらい、書類を整えました。

 

僕のような2代目になる、事業後継者は、あらかじめ、自社の退職金積み立てについては、

知っておくと良いと思います。

決算書を見ると、銀行借入とか売掛金というのは、自分が営業をやっているれ、ある程度の実態は把握できると思います。

しかし、簿外のものは、知りようがありませんから。

 

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3、自社をM&Aで売る場合、株式売却額だけでなく、退職金をもらう方法もある

 

中小企業のオーナーが自社をM&Aで売却する場合に、

会譲渡金額をそのまま受け取るよりも、役員退職金を活用することで手取りが増えるケースがあります。

とりわけ、社長が100%株主である場合です。

これを、M&A業界では役員退職金スキームと呼んでいます。

 

中小企業の売手オーナー社長が、「会社をM&Aするタイミングで役員退職金を受け取りことで、会社の純資産を圧縮してから株式を譲渡する」

というのが株式譲渡+退職金スキームになります。

説明している僕も、いまいち分かっているようで、分かっていません。

 

退職金は税金面で優遇されている一方で、金額や支給のタイミングなどなど、

税務上厳しい要件があるので注意が必要です。

ただし、要件さえしっかりとれば、退職金の支給を使って効果的な節税を行うことが可能です。

 

株主譲渡に関する、税金自体が、所得税よりはかなり低いので、うまく退職金を組み合わせないとメリットがでません。

事前に、税理士さんに、よく相談してから実行するか、

税務のアドバイスもできるM&A仲介会社に依頼することが大事です。

 

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まとめ

二代目は退職金積立不足(簿外債務)についてまとめますと、

中小企業の場合は退職金が簿外債務となっていて、決算書に反映されていないケースがある。

本来、いくら積み立てる必要があるか、把握するところからスタート。

中小企業の退職金積立不足の解決策は以下の3点

  • 退職金を分割払いさせてもらう
  • 生命保険を使って退職金を積み立てる
  • 退職金規定を改定して新たな退職金積立を不要にする

他にも、中小企業の退職金については、

中小企業のオーナーが自社をM&Aで売却する場合に、

会譲渡金額をそのまま受け取るよりも、役員退職金を活用することで手取りが増えるケースがあります。

いずれにせよ、社労士・税理士あるいは、M&A仲介会社の専門家に相談してください。

投稿者 himico-blog