もう10年以上も前のことですが、
僕がIT会社の2代目社長となったとき、
方針おおきな柱が、「オーバーセールス(過剰セールス)」を止めるというものでした。
営業チームに、会社からトップダウンのノルマを課さないというものです。
それは、なぜか?
顧客のニーズに合わないことは止めるべきだと思ったからです。
今日のテーマは IT ビジネスは情弱狙いということについて。
刺されることを覚悟でお話しします。
先日、知り合いの社長が、大手証券会社の営業のことをディスってました。
「某D証券は、知識もない若い担当営業がつくが、そいつがついているせいで、
自分の株式の信用取引の画面で、損益情報が見えない」
一瞬、いまどき、そんな時代遅れがあり得るのかな?と思いましたが、
自分の経験した大手証券会社の営業モデルを考える、とそれもそうだと思いました。
これはIT企業にも当てはまります。
この話は、いったん脇に置いて、本題の IT ビジネスは情弱狙いに戻ります。
テーマは3個です。
- 大手ITベンダーはなぜ会計ソフトをゼロ円で売るのか、その狙い
- その会社のIT予算をシェア100%取りに来る
- 決算月になると、「カチ込み」してくる
以下、順をおって説明していきます。
1、大手ITベンダーはなぜ会計ソフトをゼロ円で売るのか、その狙い
一口で、IT企業といっても、いろいろあります。
今回、主に扱うのは、中小企業にソフトやハードを販売するITベンダーについてです。
ITベンダーとは、IT製品の販売やITクラウドサービスを販売事業と保守事業をしている企業のことです。
もう10年以上も前の話なので今でもやっているかわかりません。
ITベンダーは、そこまでやるのか?という注意喚起の趣旨で読んでください。
例えば、会計システムを無料であげますという戦法です。
それも、数万円のAmazonで売っているような安いものではありません。
100〜300万くらいする、上場企業でも使えるような立派なシステムです。
これを、会計と販売のネットワーク版(ERP・統合パッケージなどと呼ぶ)など、
いくつかシステムをまとめて買う時に会計ソフトだけを値引きするのです。
僕は会計ソフト専業で、昔は売っていたのでこの手を何度かやられました。
僕らのような、競合落としという趣旨もあるのですが、もっと裏の目的があります。
それは、顧客の会計データから、その会社のIT予算を丸裸にしてしまうのです。
会計の元帳で、リースやITのソフト・ハードに関するデータを抽出します。
そして、その導入日付から次の入れ替え時期を判断して、その全てを自社で提案していくわけです。
2、大手ITベンダーは顧客中小企業のIT予算をシェア100%取りに来る
1の続きになりますが、「ワンストップサービス」というのがあります。
ワン・ストップ・サービスは、「ひとつの場所・会社でいろいろなサービスが受けられる環境、場所、会社」という意味です。
大手ITベンダーも、「ワンストップ」でと行ってきますが、その意味は、そのお客のIT予算を100%取り、自社の売上を最大化したいということで、決して顧客視点ではありません。
「販売システムを、全支店に入れるのならば、ネットワークシステムの管理も全部、弊社でやらせてください。そうすれば、障害の際にも、ハード・ソフトの両面で対応できますから、お客様がその 『切り分け』をする手間も省けます。『ワンストップ』でうちが全てやります」
こんな感じでいってきますね。
そして、シェアをしっかり上げて、独占していくと、
徐々に、保守料などの費用を値上げしていきます。
もう、現場の人が、その会社に丸投げ依存しているので、逃げられないからです。
これ、大手ITベンダーの常套手段です。
冷静に、ひとつの会社にそこまで依存しても大丈夫か?
というのは、判断して。
できれば、仕入れ・購買と一緒で、分散してITサービス・IT商品を購入することで、リスクヘッジしたほうが良いですね。
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3、決算月になると、「カチ込み」してくる
「カチ込み」というのは、殴り込みという意味です。
乱暴な言葉ですが、顧客からすると、それほど暴力的で不快な行為です。
要は、3月・9月など、その会社の決算月に最後の年間目標を達成するために、営業攻勢をかけてくることです。
「今月が決算なので協力してください」とか、「決算なのでお安くします」というのはかわいいものです。
現に、日本の自動車販売は、もう何十年も3月が、年間で一番安く車が買える時期となっています。
大手ITベンダーや、開発会社などは、やくざ的な口上を使います。
例えば、
「開発担当者は、あちこち引っ張りだこで、いま、注文を入れてこの開発者を抑えておかないと、いちど、別のプロジェクトに取られると取り返しのつかないことになります」
というのが典型的なパターンです。
あと、昔はよくあったのが、サーバーの容量不足でパンクしますとか、ネットワークが遅いので、ルーターを入れ替えないといけないとか、社内の販売システムのレスポンスを上げるためには、データベースサーバーを増設するとかです。
まあ、どちらも、冷静に考えてみると、
だったらもっと事前に言ってくれという話なんです。
中小企業だからって舐めてんのか、社長にお金の話をするのが、どんだけストレスかかることなのかって、IT担当者を思うはずです。
それで、その大手ITベンダーの決算月とか調べると、アレっ、今月じゃない、なんてなり、普通はなんとか断る、わけです。
さらに一昔前だと、それで、新しい年度に入ると、
暗い顔した大手ITベンダーの担当者が新しい人連れてきて、今度担当変わります、みたいな構図なのです。
こわいですね。
まとめ
大手ITベンダーの営業がウザくて、強圧的なのは、
中小企業を情弱として舐めているからです。
以下の営業手法には、要注意です。
- 大手ITベンダーはなぜ会計ソフトをゼロ円で売るのか、その狙い
- 大手ITベンダーは顧客のIT予算をシェア100%取りに来る
- 大手ITベンダーは決算月になると、「カチ込み」してくる
じゃあどうしたら良いかというと、
あなたは、普段の買い物をデパート・百貨店で買いますか?
という質問です。
いつも、三越で買ってるよ、という人は、大手ITベンダーで今まで通りに買ってください。
デパ地下以外は、もう10年も、デパート・百貨店で買い物したことないという人は、
自分の頭で考えてください。
実際のところ、大手ITベンダーでしか、買えない商品・サービスなんて、数えるほどしかありませんから。
最後に、お時間のある人は、お付き合いください。
冒頭の大手証券会社の営業のことをディスってた話です。
「某D証券は、知識もない若い担当営業がつくが、そいつがついているせいで、自分の株式の信用取引の画面で、損益情報が見えない」
これなんですけど、証券取引したことがない人にも、分かるように説明するとですね。
もともと、株式の売買は、個人が証券会社の営業マンに電話で依頼していました。
信じられないかもしれませんが、25年前くらいはそうでした。
ですから、一回の取引で幾ら儲けたのか?月間で幾ら儲けた?年間累計では?
これは、顧客と証券営業マンの「情報格差」を悪用した営業スタイルです。
最近では、「情報の非対称性」ともいいます。
情報の非対称性は、市場における各取引主体が保有する情報に差があるときの、その不均等な情報構造である。「売り手」と「買い手」の間において、「売り手」のみが専門知識と情報を有し、「買い手」はそれを知らないというように、双方で情報と知識の共有ができていない状態のことを指す
Wikiより
つまり、
証券会社の営業は、顧客の取引履歴のデータベースを全て見れる。
当然、売買の対象企業の詳細な情報も全て調べられるし、リアルタイムの株価や、
株価の履歴であるチャートも確認できる。
それに対して、25年前の顧客である僕は、そのほとんどが見れずに、
営業に電話して要求した内容だけ教えてもらえることができた。
しかし、
現在では、D証券でなくて、松井証券をはじめ、多くのネット証券では、契約すると全ての情報をPCやスマホで、リアルタイムで入手することができる。
ここには、「情報格差」も「情報の非対称性」ない。
これが、伝統的な対面型巨大証券の凋落の最大の理由です。
営業スタイルがうざくて、その営業マンや支店網がコストの塊だからです。
これがある限り営業経費が高すぎるので、顧客への手数料を高く設定するしかありませんね。
その結果、営業マンは、ノルマを達成するために、顧客へウザイ営業攻勢をかける。
お客が離脱する→営業マンのノルマがあがる、という悪循環ですね。
これはIT企業でも、自動車業界でも、生命保険でも、大企業は全て同じ構図です。
僕は、ひとことで「オーバーセールス(過剰営業)」と名づけました。
もう10年も前のことですが、
僕が社長になって、ひとつの方針が、「オーバーセールス」を止めるというものでした。
それ以来、営業チームに、会社としてのノルマを課さないというのを、継続しています。
やっぱり大手ITベンダーも、伝統的大手証券会社も恐竜なんですよね。
それは大きな図体を満足させるだけの餌が、日本国内には、もうないので、
その生命組織を維持できないのですよ。
そういう意味では、大塚家具は、良くも悪くも、強制的なスケールダウンの改革の途上にいますね。